新幹線でマカロンを

先日、北陸新幹線に乗る機会があった。私は、二人掛け窓側E席の指定を取っていたが、金沢行きの「はくたか」に上野駅から乗り込むと、通路側D席の若い女の子がテーブルを引き出して、早くも駅弁を広げていた。

ビジネス客が多い東海道新幹線の下り列車では、通路側の客は新横浜発車まではテーブルを出さず、箸を動かすなんてもってのほか、という暗黙のルールがあるが、北へ向かう新幹線は穏やかだ。

なんてことを思うのも、これが女の子だからで、キモヲタやクソジジイが同じことをしてようものなら、たちまち非常識呼ばわりするだろうな、などと考えていると、駅弁を食べ終わったその女の子が、私の方を振り返り、

「良かったら、これ食べますか」

と、包みに入ったマカロン1個を差し出した。

実を言うと、私はマカロンがあまり好きではない。

しかし、令嬢の好意を無下にするのは野暮というものだろう。私は、礼を言って、自分では決して買わないマカロンを食べた。北に向かう新幹線のマカロンは、優しい味がした。