Imperial

ロースクールでは、「法曹倫理」という必修の授業がある。クラス授業だが、ゼミ形式で、来週は私たちのグループが発表だ。その資料探しのため、法学部図書館の書庫に入った。

学部生時代は書庫には入れず、開架コーナーにない場合は、本を指定して、係員に頼んでとってきてもらうしかなかった。今の身分では、書庫まで入れる。

恥ずかしながら、書庫に入ったのは初めてで、その蔵書量には圧倒された。戦前の本も、きわめて良好な状態で、平然と並んでいる。いつの間にか、資料探しはそっちのけで、古めかしい本を、興味本位で漁っていた。

とくに感慨深かった1冊は、大正15年刊の『判事・検事・警察』。当時の大審院判事の手によるもので、原敬首相暗殺事件の判決批評(学術的なものではなく、「小話」といった内容)などが載っている。

私が京大を受験した平成13年当時、国語の入試問題には、「明治文語文」が必ず出題されていた。戦前の改まった本は、この文体で書かれている。古文ほど皆目見当つかぬことはないが、俄かには理解しにくいところもある。

受入印は昭和2年の日付で、「京都帝国大學法學部 Kyoto Imperial University Department of Law」とある。「帝国」、"Imperial"。懐かしい響きだ。

昭和2年といえば、亡き祖母が生まれた年だ。その頃から、この本は、一貫してここにあり、あの戦乱をくぐり抜けたのかと思うと、万感胸に迫った。