連続脱線

不可解というか、不思議なことはあるもので、神戸電鉄有馬口駅構内のポイントで、下り電車の脱線事故が起きた。2週間前には、ほぼ同じ地点で、上り回送電車が脱線している。

案の定、マスコミは、「また脱線」と騒いでいる。事実としてはその通りだけれど、原因がわからないのに、「また」という言葉を使うのは、失当である。例えば、交通事故は毎日のように起こっているが、「また車の事故」とは、ふつう言わない。

前回の事故も今回の事故も、原因は目下調査中だが、一つはっきりしているのは、福知山線事故のような、単純な運転士一人の過失(制限速度遵守義務違反)ではないということである。また、線路に異状があったわけでもないようで、原因究明には時間がかかるだろう。

福知山線の事故以来、日本中が「脱線」に過剰反応している。今回の事故でも、兵庫県警が捜査に乗り出している。しかし、刑事訴訟法により、警察が捜査をできるのは、「犯罪があると思料するとき」に限られている(刑訴法189条2項)。今回の一連の事故で、お客様にけがをされた方はいない。犯罪がないのに警察が動くなど、越権行為(職権濫用)である。あるいは、被疑事実は過失往来危険罪(刑法129条)だとでもいうのだろうか。

鉄道会社に過失がなくても、事故は事故であるから、事故原因の学究的解明を任務とする国交省の事故調が動くのは当然だが、本件のような技術上の問題点を解明するのは、所詮、素人の警察には、無理な相談である。警察は、身の程を知るべきだし、世論におかれても、ナンセンスな「犯人探し」にこだわる姿勢は、今すぐに改めていただきたい。