「スーパードリーム号」試乗会

stationmaster2005-10-27


今日の午後、JR西日本グループの西日本JRバスより招待され、「スーパードリーム号」の試乗会に参加してきた。

私の趣味の「本業」は鉄道であるが、なかでも、かつての日本国有鉄道国鉄)には、格別の思い入れがある。その国鉄の自動車事業部門を引き継いだJRバスも、いわば鉄道の「弟」のような存在として、気づけば好きになっていた。

来月から、西日本JRバスは、JR東日本系列のJRバス関東と共同運行する東京−大阪間の「ドリーム大阪」系統に、グレードアップした「スーパードリーム号」を走らせる。既存の「ドリーム号」を、ゆったり、豪華にした「スーパードリーム号」の乗り心地を、大阪駅から淡路島を往復するルートで味わってきた。

12時10分。10分遅れて(延長して)、2限の授業が終了。大阪駅13時10分の集合に間に合うためには、地下鉄今出川駅を12時17分の電車に乗らねばならないのだが、かなり厳しい。もし無理でも、5分遅刻の13時15分には大阪駅に着けると速断し(スーパードリーム号の出発は13時20分)、百万遍からタクシーで今出川駅へ。駅の改札に着いたのは12時19分。タッチの差だと、いちだんと口惜しい。

京都駅でJRの「新快速」に乗り換え、時速130キロで東海道本線を快走し、定刻に大阪駅に滑り込む。10月15日付の日記http://d.hatena.ne.jp/stationmaster/20051015で書いた、新しい東海道線下りホームには、「第5場内信号機」まであるとか、どうでもいいことに感心しつつ、JRバスの大阪駅へ走る。

西日本JRバス」の腕章を着けた社員に、招待状を見せると、「お待ちしておりました、こちらへ」と、バスに案内される。時刻は13時16分。出発には、なんとか間に合った。他の参加者はすでに着席しており、視線が一斉に注がれる。飛行機に、遅れて搭乗した時のような気分になる。

従来のドリーム号は2階建てバスなので天地が窮屈だったが、ハイデッカータイプのこのバスは、開放的な雰囲気で、通路を歩きやすい。

指定された席は、「9A」。窓際というのは見ればわかるが、後ろから2列目ということに、乗って初めて気づき、驚く。バスの小ささ(注、列車や飛行機と比べて)と、定員28人の贅沢な座席配置を実感する。3列のゆったりしたシートに腰を下ろす。バスだからシートベルトもあって、飛行機のビジネスクラスのようだ。シートポケットには、スリッパ(紙製でなく、そこそこまともなもの)・アイマスク・歯ブラシ・おしぼり(洗って繰り返し使えるらしい。一般発売に先行して採用!)をまとめた「安眠セット」と、「おーい、お茶」が入っている。これらは、スーパードリーム号だけで提供され、ドリーム号との差別化の一環だ。もちろん、持ち帰り自由である。

毛布も、ドリーム号ではひざ掛け程度のものだが、体全体がすっぽり覆える大型のものが備えられている。きょうの試乗会では、お世話になることはなさそうだが。

バスは、西日本JRバスの社員らに見送られ、阪神高速に入る。JRバスはETCを装備しているので、料金所の通過もスムーズだ。ハンドルを担当するのは、大阪高速管理所の助役。本社営業課の若い社員が、挨拶に始まり、車内設備の案内、営業PRなど、なかなか忙しい。

湾岸線に入り、眩しいほどの日差しの中を、西に向かって走る。安心感のあるハンドルさばきに、JRバスらしさを感じる。恐怖感を覚える京都市バスとは違う。

六甲アイランド神戸港など、乗り慣れた鉄道とは違う車窓は、なかなか新鮮だ。こんなに海が近かったか、と思う。

添乗社員の話を、聞くでもなく聞いていると、大阪駅を出て約1時間。車窓のハイライト・明石海峡大橋に差し掛かる。この橋の開通(平成10年)以来、京阪神対四国間輸送は、西日本JRバスのドル箱路線の一つに成長した。その分、瀬戸大橋経由の鉄道は苦戦しているのだが。

大小の船が行き交う瀬戸内海を、高々と跨ぐ。天気がいいので、海の青さがひときわ美しい。数分で橋を渡り終え、淡路島に入る。淡路サービスエリアが、折り返し地点。参加者全員で、バスの前で記念撮影。倍率5倍をくぐり抜けた招待客は、老若男女選りすぐったようで、こういうイベントにつきものの、「いかにも…」な方は、私を除いて(?)数名しかいない。ふつうの高速バスの雰囲気である。

運転士さんが所在なげにされているので、話しかけてみる。全国各地のJRバスを乗り歩いて、JRバス各社の運転士とは、数え切れないくらい話をしてきたが、JRバスの運転士には、他のバス会社にはない、魅力的な「何か」がある。今日の運転士さんは、国鉄バス以来23年の経験を持つベテラン。いまは「助役」として、運行管理を主に担当されており、実際にハンドルを握ることは少ないそうだ。

「バスの安全装置は進歩しましたが、肝腎なのは、それを扱う人間です。若い社員の教育には苦労も多いですが、人を育てるのがいちばん重要だと考えています」

大きく頷く。国鉄バスの伝統を守り続けるJRバスのプライドを感じる。JRバス運転士に共通する魅力は、鍛え上げられた技術に裏づけられた誇りから、醸し出されるものなのだろう。

帰路は、営業の社員が音頭をとって、「リクライニングをフルに倒してみてください」。140度倒れるシートは、徹底して「眠り」にこだわっている。どのくらい寝心地がいいか。明石海峡を渡って目を閉じたら、気がつくと、大阪市内を走っていた。

スーパードリーム号は、11月2日、東京−大阪線でデビューする。ドリーム号との運賃差300円は、むしろ安すぎるくらいだ。夜行バスは寝られないので極力避けてきた私だが、一度乗ってみたい、と思う。試乗会は、大成功だったということである。