フジモリ大統領のこと

6日、チリのサンティアゴで、ペルー前大統領のフジモリさん(日本人)が、チリ警察に拘束されたというニュースは、衝撃的だった。この件をめぐる国際法上の問題は、ホームページ「主張」で書くとして、今夏ペルーを訪れた者としての感想だけ、書いてみたい。

私は、フジモリさんは大統領在職中、正しいことをしたと思っている。90年代初頭、年7000%ものハイパーインフレを抑え、社会基盤を整備し、貧困対策に力を入れた。また、テロを繰り返していたゲリラ集団を叩き潰し、治安を回復した。

南米のような、民主制の成熟しきっていない国では、ある程度強権的な手法も必要なのは、当然のことで、そのことを理由に逮捕するなど、現政権の政治キャンペーンでしかない。

私はペルーで、現地の人と話す度に、「あなたはフジモリさんが好きか?」と、尋ねた。予想外の結果だった。プーノやアレキーパといった地方都市、とくにインディヘナ(スペイン系ではなく、先住民の子孫)の人たちを中心に、フジモリさんは絶大な人気だった。

ボリビアとの国境・ティティカカ湖の、トトラ(葦)でできた「浮島」・ウロス島に、郵便局や太陽光発電システム、小学校、診療所などを整備し、島の人たちが、人間らしい生活を送れるようにしたのは、フジモリ元大統領だと聞いた。

ペルーで最後に訪れたアレキーパでは、観光学専攻という、同い年くらいの女子大生2人から「インタビュー」を受けた。彼女たちは英語が話せたので、フジモリさんのことを突っ込んで聞いてみた。

「ミスター・フヒモリ(←スペイン語では、Jは「ハ行」で発音する。"Fujimori"の読みは「フヒモリ」となる)、私は好きよ。もちろん、いま日本(←同様に、Japonは「ハポン」)に亡命してることも知ってるわ。彼、日本では有名なの?来年の大統領選挙に出るって言ってるけど、どうなるかはわからないわ」

彼女は、続けて、

「ところで、フジモリさんって、あなたのお父さん?」

と言って、きゃははと笑った。大学生の言うことは、日本もペルーも一緒だ。私も、思わず吹き出した。

彼女たちは、今頃、フジモリさん拘束のニュースに、何を思うのだろうか。そして、私がペルーで出会った人たちは………