自宅→大学1時間の可能性

私は、遅刻が嫌いだ。「鉄道」をものさしに、世の中の全ての事象を見ているから、必然的にそうかもしれない。少なくとも、時間にルーズな人と付き合うのは、かなりしんどい。私だって、人との約束に遅刻したことがないではないが、不可抗力だった(もちろん、謝った)。

それが今日、目が覚めると、9時20分だった。10時30分からの2限に出席する日は、7時半に起きることにしている。実に2時間の寝坊である。唸った。

ともかく、布団から飛び起き、顔を洗いながら、頭の中に入ってる時刻表を検索する。急げば、大阪9時45分の「新快速」に乗れるかもしれない。これに乗れば、京都着10時15分。タクシーを飛ばせば、ギリギリセーフも夢じゃない。

普段の3倍速(当社比)で、野菜ジュースを飲み、着替える。さすがに、髪の毛をいじっている時間はない。かばんをひっつかみ、家を出たのは、9時27分。起床からの新記録達成だが、喜んでいる暇はない。自転車に飛び乗る。普段は、最寄り駅までは歩きだが、立花9時33分の普通に乗るには、歩いていては間に合わない。駅近くのスーパーの駐輪場に、放り込んでおけばよい。

自転車の運転には、自信がある。安全を重視しつつ、地上で見ている人には驚異的であろう速度で走り抜け、立花駅の階段を駆け上がる。

なんとか、間に合った。電車に乗ってしまえば、あとは、ダイヤ通りに走ってくれるのを祈るのみ。尼崎で「新快速」に乗り換える。尼崎駅のホームで、警察官が制服姿の女子高生を連れて、実況見分をしている。痴漢にでもあったのだろうが、学校は大丈夫?

新快速は時速130キロで順調に走っていたが、高槻駅の場内信号機手前で停車。ホームの「非常停止ボタン」が押下されたとのこと。こういうときに限って、余計なことをする輩がいるものだ。このせいで4分遅延し、遅れを回復できないまま、京都駅に到着。

10時20分。遅刻せずに教室に入るのは絶望的となったが、1分1秒を争う状況に変わりはない。遅刻がつくことよりも、授業の内容を聞けないことのほうが問題だ。タクシーで、川端通を北上するが、五条通の手前で、予期せぬ渋滞。

「お客さん、急いではります?」
と、運転手。飛ばしてくれ、とは言っていないが、態度でわかったのだろう。そこで、
「できるだけ速くお願いします」
と、答える。すると、運転手は、任せておけとばかりに、一本東の路地に入り込むと、三条の手前まで、そのまま北上。東山通に出て、まっすぐ百万遍をめざした。

百万遍交差点に着いたのは、10時37分。幸い、今日から教室変更があり、時計台から、百万遍の近くに移った。クラスの隣の子が、「教室間違ってない??」と、メールをくれているのを見ながら、ラストスパート。

ロースクール棟3階まで駆け上がり、授業の始まっている教室に滑り込んだのは、10時39分だった。

尼崎の自宅から、百万遍の教室まで、「1時間」の壁は、やはり高かった。しかし、これ以上速く着くことは、不可能だったろう。週明け早々、大阪−京都間JR運賃540円・京都駅からのタクシー運賃1670円は、痛い出費だったが、なかなか新鮮な気分でもあった。