似て非なるもの

先日、申請したビザを受け取りに、再び、豊中にある在大阪ロシア連邦共和国総領事館に出頭した。それにしても、ここのビザセクション、窓口のおばさんは手数料などの収納業務専門のようで、それ以外は、わざわざ奥から職員が出てきて対応するという、よくわからない運営方法である。窓口のおばさんに、ビザについて尋ねようものなら、ロシア語ですごい剣幕で怒鳴られるので、注意されたい。

ロシアのビザは、パスポートの「査証」ページに貼り付けられて返ってくる。日本人の場合、ビザ免除国が多いので、パスポートは「スタンプ帳」のように思っている人もいるが、こうしてビザを貼付するのが、本来の使い方である。

ところで、「大使館」と「(総)領事館」の区別、皆さんはご存知だろうか。どちらも「在外公館」ではあるが、権限・機能は全く別である。例えば、外国で大きな災害や事件・事故があると、「現地の日本大使館によりますと、巻き込まれた日本人はいない模様です」などと報道されることがよくある。この使い方は誤りである。

大使館は、国を代表する外交使節団(その長が特命全権大使)として設置される。だから、大使館は、首都に置かれ、新しい特命全権大使が着任すると、国家元首(わが国の場合は天皇)に「信任状」を奉呈する。これに対して、(総)領事館は、外国における自国民保護・自国への渡航者に対するビザ発給などの事務を扱う。領事は国を代表する機関でないから、「信任状」などはない。わかりやすくいえば、大使館は「国vs国」の関係で、領事館は「国vs市民」の関係で設置される。

こう書くと、あれ、○○大使館で○○国のビザを取得したが、と不思議に思う人がいるかもしれない。この場合は、大使館の中の「領事部」という組織が、領事関係事務を取り扱っている。あくまで、大使館は、北朝鮮問題をめぐる「六者協議」に典型的に見られるように、「外交」を行なうための機関なのである。

トリビアついでにもう一つ紹介しておくと、カナダやオーストラリアなど、英国連邦の加盟国に英国から派遣されるのは、外交官ではなく、"comissioner"(弁務官)という建前をとっている。現在の制度では、英国との間に法的な上下関係はないはずだが、歴史上の産物ということなのだろう。