JALvsJR東海―理想のリーダーとは―

メールの形をしただけの、ただの「怪文書」に踊らされて自爆した民主党の混乱ぶりは、目に余るものがあるが、それ以上に、最近のJALは深刻だ。

自らも経営責任を負うべき取締役が、全管理職の1割にも及ぶ賛同署名を集めて、代表取締役社長らの退陣を迫るというのも異常だし、経営陣は、社内の掌握さえできていない。こういう組織が、乗客の命を預かる航空旅客運送事業を営んでいるというのが、もはや異常ともいえる。

抜け出せない赤字に苦しむJALに、とっておきの処方箋がある。それは、東京−大阪線などのダンピングをやめることだ。

国内線のうち、新幹線競合路線には、新幹線の運賃・特急料金を下回る割引運賃が設定されている。さらに、今冬は、「ダブルマイル」キャンペーンもやっているが、マイルは、航空会社の「負債」に他ならない。

神戸空港の開港に合わせ、JALは、東京−神戸間に期間限定で9000円という破格の運賃を設定した。スカイマークが普通運賃を1万円に設定してきたので、それへの対抗もあったようだ。

迎え撃つ立場のJR東海の松本社長のコメントは、明快だった。

「いいんじゃないですか?まあ、航空会社さんも消耗戦で大変でしょうね

まさに、王者の風格さえ漂う。地に足をつけた、鉄道会社の経営者らしい一言だ。

松本社長の前任の葛西さん(現会長)は、以前(平成15年の品川駅開業の頃だったと思う)、新幹線への「マイレージサービス」導入の可能性を問われ、こう言い切った。

マイレージは、絶対に導入しない。(マイレージは)麻薬のようなものだ」

この言葉に、私はしびれた。「麻薬」―。過激な表現だが、非常に言い得ている、と思った。

私なりに敷衍すると、マイレージ制度を導入すると、短期的にはお客様も増えるだろう。しかし、先にも書いたように、貯め込まれたマイルは、すなわち企業の負債。後々になって、ボディブローのように効き始め、じわじわと企業を蝕んでゆく。気づいた時には、もはや手遅れ―。

これは、いうまでもなく「麻薬」そのものである。

ライバルに踊らされず、的確な経営判断の下、より本質的なサービスである「安全・安定輸送」の確保に邁進する。葛西さん・松本さんのような優秀な経営者に恵まれたJR東海は、世界一の企業といってよいだろう。

要するに、リーダー次第で、組織は良くも悪くもなる。「組織は人なり」である。