激突
夕方、いつものように武庫川のサイクリングロードを巡航していると、前方を、おっさん操縦のママチャリが猛スピードで爆走しているのが目に入った。
そうはいっても、私のほうが速いので、難なく追いつき、追い抜いた。追い越しざまに、ちらりと後ろを見やると、おっさんと目が合った。
しばらくそのまま走っていたが、背後に「殺気」を感じて振り返った。なんと、あのママチャリのおっさんが、般若のような形相で猛追してくるではないか。おっさんにとっては、自転車で抜かれるというのは屈辱だったのだろう。
しかし、私としても、おっさんに抜き返されるわけにはゆかない。スピルバーグ監督の処女作『激突』の主人公になった気分で、一段と加速した。
一時は一馬身の差まで迫られたが、徐々におっさんの息遣いが荒くなってくるのを感じ(こう書くとイヤラシイが)、気がつくと、おっさんは燃え尽きて、戦線離脱していた。
私は、そのまま河口まで突っ走り、爽やかな潮風にしばし吹かれていた。