天下の愚策・定額給付金

国会で,もめにもめた「定額給付金」の支給が,一部の自治体から始まった。

経済のことは私にはよく分からないが,よくも2兆円も使って,天下の愚策に打って出たものだ。

思えば,ちょうど10年前の平成11年の今ごろ,当時,連立与党に入りたての公明党の発案で,「地域振興券」なるものが,16歳未満の子供のいる家庭に配付された。あの地域振興券がもたらした経済効果は,きちんと検証された上での今回の定額給付金なのだろうか。私が日本中を旅した実感としては,10年前のほうが,地域(田舎)ははるかに「振興」していたが。

そもそも,全国民に一律1万2000円(子供・老人は2万円)を配って,経済政策上意味があると本気で考える者がいるのだろうか。「持てるもの」にとってみれば,吹けば飛ぶような額であろうし,「持たざるもの」は,生活費の足しにするだけである。

また,こういう見方もできよう。まじめに働いた者が納めた税金が,引きこもりのニートに再配分されるわけである。「働かざる者,食うべからず」という言葉があったはずだが,定額給付金は,まさに国を挙げての「モラル・ハザード」(倫理破壊)である。もっとも,この国は,農民をして稲作を放棄させ,仕事をしない農家に金をばら撒く「減反」を何十年も続けてきたから,モラル・ハザードは,今に始まったことではないのかもしれない。

それにしても,どうしてこうも目先のことしか考えない人が増えたのか,不思議でならない。同じ2兆円を使うなら,もっと有意義な使い道は,いくらでもある。いわゆる「セーフティネット」としての社会保障,次代の国家を支える人材の育成,待ったなしの環境問題…。

短期的な景気刺激策として,どうしてもというのなら,例えば,成田・羽田の両空港の拡張整備を加速し,物流分野での国際競争力を高めるとか,JR東海が自己負担での建設を決めた東海道新幹線のバイパス(リニア中央新幹線)整備に従来の「整備新幹線」と同じ枠組みを適用し,開業時期を早め,「この国のかたち」を変えるとか,方法はいくらでもあった。

ちなみに,私は,定額給付金を受け取ったら,次代の鉄道の発展のため,全額をJRグループにつぎ込むつもりである。