裁判官と語る

久しぶりに、ロースクール生らしい日記を。

きょうの午後、京都地裁に刑事の裁判傍聴に出かけ、その後、京大の法科大学院客員教授として来られている判事の方たちとの懇親会(という名の飲み会)に参加してきた。同様の企画は6月にもあり、その時に、担当のE判事・教授に大いに気に入られたので、「今回も行くしかない」という感じで。

傍聴したのは、公務執行妨害被告事件(自宅前で、夫に逮捕状を執行しようとした警察官の頭部を殴打するなどし、公務の執行を妨害した事案。否認)・強盗強姦被告事件(被害者をカッターナイフで脅し、ホテルに連れ込み姦淫し、現金2万円・携帯電話移動機を強取した事案。一部否認)・商標法違反被告事件(シャネル・ルイヴィトンのコピー商品を販売し、当該会社の商標権を侵害した事案。自白)・窃盗被告事件(共謀して運送会社車庫からトラック・ユンボなどを窃取した事案。自白)などなど。新聞報道もされていない無名の事件だが、「事実は小説よりも奇なり」を実感。興味がある人は、ぜひ一度、刑事裁判の傍聴に出かけてみてほしい。

その後、メインイベントの(?)懇親会では、E判事と、6月の話の続き。私が検察官志望だと言ったところ、「検察官にいちばん必要なものは何か、わかるか?」と問われ、少し考えてから「被害者とともに泣け、ってことでしょうか」と答えたら、「いい線いってるね。『裸の正義感』だ。このことの意味は宿題だ」と、おっしゃった。

そして、その答えのようなものを、今日、伺った。「検察官には、権力の恐さを知ってる人にこそなってほしい。権力ではなく、『裸の正義感』で動く。けれども、正義感で動いてるってことは、外に悟られないように」

難しい注文である。加えて、検察官志望で固まっている私に、こう言われた。
「真野君のように、志望が決まっているというのは、不幸でもある。他の職の良さを知るチャンスを放棄してしまっているからだ。べつに、志望を変えろ、というわけではない。ただ、裁判官・弁護士の実務修習の時に、『しょせんあいつは検察官志望だ』ではなく、『検事になるのはやめて、うちに来い』と言われるくらいの男になれ」

E判事のこの言葉に、大いに勇気づけられたのは、言うまでもない。