安全を神棚にあげるな

期末試験が来週に迫り、あまり日記を更新している時間はないが、今日は書かなければならない。

きょう13時18分頃、JR西日本伯備線根雨−武庫間で、保線作業中の社員が特急「スーパーやくも9号」にはねられ、3人が死亡する惨事が起きた。

現場の天候については、「前が見えないほどの雪だった」という「目撃談」から、「雪はそれほどでもなかった」という報道まであり、ひとまずおく。いずれにせよ、考えれば考えるほど、防げた事故だったのではないか、との思いが強くなる。その意味では、お客様に死者が出たが、およそ回避可能性のなかった「いなほ」脱線事故より、ショックが大きい。

当たり前のことだが、保線作業は、線路に立ち入って行なう、危険な作業である。大規模に掘り返したりする場合は、列車運行のない時間帯に、「線路閉鎖」という手続を経て行なうが、ダイヤの合間を縫って、作業することもある。このときは、作業現場の手前に、「列車接近監視員」を2段に配置し、列車が来た場合は、退避指示を出すことになっている。

JR西日本によると、本件でも、監視員は配置されていたが、作業責任者が、列車の接近してくる方向を勘違いし、反対方向に配置していたという。現場は、両方向から列車の来る可能性のある単線区間だった。「もう一度、ダイヤ確認を励行していれば…」。残念でならない。

この責任者を責めるのは、容易い。結果の重大性からみても、責任者の立件は避けられないかもしれない。しかし、私はいつも言っているように、不毛な「犯人探し」で終わらせてはならない。

人間は、誰でもミスをする。そしてそれは、「いい加減」な人に限らない。真面目な人でも、一瞬、雑念にとらわれたり、気が散ることがある。もちろん、職場規律の確保は大事だが、「責任者ともあろう者が何していたんだ」、という「精神論」だけでは、事故はなくせない。このことを、声を大にして言いたい。

保線作業は、機械的な安全装置で人間のミスをバックアップすることは難しい。では、どうすればよいか。一人に責任を押しつけるのではなく、作業手順を確認し合う体制を作ることだ。そして、喫緊の対策としては、単線区間での作業時は、上り・下り両方向に監視員を配置することである。

本稿の最後に、殉職された社員各位のご冥福を、衷心よりお祈り申し上げます。