旅客営業規則第十六条第二項

昨夜、寝る前に、宮脇俊三さんの随筆集を読んでいた。宮脇さんが「国鉄最長片道きっぷ」の旅をされた時、ある読者から、「そのルートは最長ではない、このルートのほうが81キロも長い」という投書があったらしい。宮脇さんは、愕然として調べ直し、結果、投書のルートは、「旅客営業規則」16条2項に抵触し、発券できない「幻の乗車券」であることがわかる。丁寧に返事を書いて、いざ送ろうとしたら、差出人の住所・氏名がなく、「一読者より」だった、というオチつきだった。

「旅客営業規則」とは、JRグループの「運送約款」で、法学部生ならおわかりのように、契約関係の当事者(旅客)は、須く了知していなければならないはずである。ところが、それは「建て前」で、JRに乗車されるお客様のうち、「旅客営業規則」の「り」の字も知らぬ人がほとんどだろう。

第一、JRの「旅客営業規則」は、300条以上あり、それだけで一冊の本になる。専門書店では、「鉄道六法」などと並んで市販されているが、5000円くらいする。もちろん、「約款」であるから、駅の窓口には備えられていて、旅客が要求すれば、いつでも閲覧できる(ことになっている)。

高校3年の時、山陰本線円町駅で、友人とともに、「旅客営業規則」の閲覧を申し出たことがある。応対した駅員は、「あれは客に見せるものではない」と放言した。私はあきれ返り、
「客に見せなくて、誰に見せるんですか?」
と、言い返すと、駅員は渋々差し出したが、なおも「自分の目の届く範囲で閲覧しろ。メモはとるな」などと、意味不明なことを言っていた。

現在、JR西日本は、「旅客営業規則」をホームページに掲載してくれているが、当時はなかった(もちろん、ホームページ自体はあった)。ちょっと調べものをしようと思えば、駅で一悶着起こす覚悟が必要だった。

さて、宮脇さんが頭を悩ませた「旅客営業規則」16条2項とは、どんな規定だったか。私は、JRの「旅客営業規則」のマニアで、「日本国憲法」以上にその内容を把握しているが、「16条2項」だけでは、さすがにわからない。早速、調べてみた。

http://www.jr-odekake.net/guide/stipulation/index.html

すると…「第16条 削除」