現行犯逮捕

夕方、阪急梅田駅からJR大阪駅への連絡通路を歩いていると、同い年くらいの男が声をかけてきた。

「私、クリスチャンなんですけど、聖書の研究に興味はありませんか?」

新約聖書なら、中学時代に読みましたが、何か? と答えてやろうかと思ったが、ふと閃いて、

「私もカトリックですので」

と、言ってみた。男は、驚いた顔で、「あ、そうですか」と、離れていった。

もちろん、私は、洗礼を受けたことはないので、正しくは「カトリック(ミッションスクール出身)ですので」(かっこ内が重要)である。

男が何者かはわからないが、「聖書」を強調して勧誘するところからすると、おそらくは、まともなキリスト教ではなく、何かと物議を醸すあの集団であろう。

その場から歩き始めて、ある法律を思い出した。「鉄道営業法」という法律に、こういう規定がある。

第35条 鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ車内、停車場其ノ他鉄道地内ニ於テ旅客又ハ公衆ニ対シ寄附ヲ請ヒ、物品ノ購買ヲ求メ、物品ヲ配付シ其ノ他演説勧誘等ノ所為ヲ為シタル者ハ科料ニ処ス

男が声をかけてきた場所は、阪急電鉄梅田駅長の管理下にある「停車場其ノ他鉄道地内」だ。あの男、鉄道営業法違反の「現行犯」で逮捕すればよかった。