北北西に針路を取れ

北朝鮮によるミサイル発射について、今更見解を示すことはしないが、気になったことをいくつか。

ミサイルが着弾した地点は、日本海の公海上だが、北朝鮮は、事前に船舶に向けた航行情報などは出していない。国際法上、公海には「公海自由の原則」が妥当するが、もし、他国船舶等に被害が出たら、どうするつもりだったのか。

船舶だけではない。日本からシベリアルートで欧州へ向かう航空機は、佐渡島沖から真っ直ぐ日本海を北上し、今回ミサイルが降り注いだ付近の空域を通過し、ロシア領空に入る。JALは、ホームページ上で、「日本航空は、日本海上空の飛行について、国交省をはじめとする内外関係機関から常に最新の情報を収集し、一便一便、状況に応じた複数の運航ルートからの選定も含め、その安全に最大限の配慮を払いながら運航を行っております。今後も情報収集に努め、安全運航の確保に全力を傾注してまいります」と発表している。空の安全にとっても、無関係ではない。

今年1月、私は、北朝鮮領内に入った。関西(KIX)から中国の瀋陽(SHE)まで、中国南方航空(CZ)とJALとのコードシェア(共同運航)便(CZ運航)に乗った時のことである。

離陸後、中国人機長から、飛行ルートについてのアナウンスがあった(私は中国語は全くできないので、英語である)。何気なく聞いていると、

"...we'll fly over CHONGJIN, DPRK, ..."(…北朝鮮のチョンジン上空を通過し…)

と言っているではないか!

国家領域とは、領土・領海・領空をいう。JALなど「日本国籍」の航空機は、北朝鮮領空は飛行できない(例えば、この時の帰路に乗ったJALの大連→成田便は、いったん南下し、韓国領空を通過)から、あの国に足を踏み入れた(正確には、上空を飛び越えた)のは、この時が初めてだった。ちょうど窓側に座っていた私は、食い入るように「この世の地獄」を眺めたことだ。