走ろう、夕陽に向かって

青空を見たのは、何日ぶりだろう。

夕方、大学から帰ってくると、雲間から太陽が差していた。ここ数日、気が滅入る天候が続いたうえに、迫り来る試験にストレスが溜まっていた。

しばらくかまってやれなかった愛車(自転車)を駆って、走りに出かけた。めざすは、定番の武庫川河口。時刻は18時40分。赤みを帯びた太陽を追って、西に向かう。

武庫川までは一般道なので軽く流し、西宮市に入り、河川敷の自転車専用道へ。普段は歩いても渡れそうな武庫川だが(実際、「探偵!ナイトスクープ」でやっていたが)、濁った水が、堤防ぎりぎりまで迫っている。平成16年秋に「計画高水流量」の記録を更新した時は、どんなだったかと思う。

風は、弱い浜風(南風)。それほど暑くもなく、理想的だ。前後輪ともトップギアに投入し、河口をめざす。JR東海道本線武庫川橋梁で、上りの「新快速」と垂直に行き違う。

阪神武庫川駅を過ぎると、向かい風が強くなってきた。ギアを一段落とす。南からの風に、夏を感じる。冬に武庫川を走ると、河口に下るのは北風に乗って楽だが、帰りは、喘ぎながらの北上になる。

よく、バイクで「風と一体になる」というけれど、真に風を実感できる乗り物は、自転車と飛行機だと思う。

ふだんは、潮の香りが漂ってくるあたりなのだが、川の水が多すぎるせいか、物足りない。ひと気の少なくなった堤防を、スプリントする。

19時過ぎ。陽は傾き、空がほんのり茜色になった頃、武庫川河口着。水面のあちこちで、魚がピチピチと跳ね、それを狙う水鳥が、水面すれすれを滑空してゆく。

5分ほどそんな光景を眺め、折り返し。数分前に大阪国際空港を離陸したばかりのB777が、高度を上げながら通過していった。