世界を旅する国際法

今週から、ロースクールはいよいよ夏休み。学生最後の「夏休み」だが、司法試験を来年に控えたわれわれにとっては、いわば「高3の夏」に相当する。

肝腎の試験前に燃え尽きない程度に、勉強しなければならないわけだが、前から書いているように、17日〜27日は海外に脱出する。それも、1週間くらいでさっさと帰ってくるはずが、いつの間にか、マレーシアのビーチリゾート・ペナン島で1泊したりする予定になっている。

開き直るわけではないが、思えば高3の夏も、廃車間近の気動車に別れを告げるため、北海道に出かけたことだ。冬休みには、親にも内緒で、能登半島日帰り往復という強行軍も敢行した。

ところで、司法試験の「選択科目」に、私は、国際公法を選択するつもりだが、国際公法は、選択科目中最少ということもあるのか(今年は全国で46人。受験生全体の2.6%)、京大では、国際公法の「事例演習」形式の授業は、開講されていない。

学部時代からの授業で、知識のインプットは心配ないとして、それをうまく使いこなせるか、不安がないではない。法律構成の仕方は、自分で勉強するしかない。

だが、私は、楽観的にとらえている。そもそも、私が国際法を好きになったのは、ひとえに海外旅行が好きだからだ。

例えば、ビザのいる国に渡航しようと思えば、その国の領事館に出向くことになり、相手国に到着すれば、当該国の入国審査官から「入国許可」の処分を受ける。そして、外国にいる間は、その国の法律に従うことになる。

昨夏、ペルーのリマで、たまたま入った歴史博物館では、スペイン語の解説文が皆目わからないなか、"Haya de la Torre"という人名に、ハッとなった。スペイン語は、語頭の"H"は発音しない(例、"Hotel"は「ホテル」でなく「オテル」)ので、「アヤ・デ・ラ・トーレ」と読む。これを聞けば、国際法を勉強された方なら、ICJ判例の「アヤ・デ・ラ・トーレ事件」を思い出すだろう。

いわば、国際法の勉強は、「机の上の世界旅行」なのだ。愛読書は鉄道の「時刻表」という人間(つまり、私のことだが)にとって、机上旅行は、疲れた頭を癒してくれる清涼剤のようなものだ。

つい先日最新版が刊行された、辞書よりも分厚い「判例国際法」(第2版・東信堂・2006年。全722頁)を前に、そう言い聞かせている。