一英語講師のつぶやき

夏期講習期間中、ある塾で中学3年生に英語を教えている。

「分詞構文」の範囲で、(かっこ)内の動詞を適切な形にせよ、という問題があった。

(Bring) up in America, she could speak Engish fluently.
(彼女はアメリカで育ったので、流暢に英語を話すことができた)

教える立場にある者が、こんなことを言うのもどうかと思うが、私は、いつも、「直感」(フィーリング)で、答えを出している。その上で、それを文法的に「こじつける」というイメージだ(もちろん、生徒には、後段部分を説明する)。

さて、上の問題を見た私は、直感的に、"brought"(過去分詞)だと思った。

Brought up in America, she could speak Engish fluently.

耳に入れてみても、違和感ないようである。

ちなみに、受動態であるから、本来は「be動詞+過去分詞」にしなければならないところ、分詞構文では、文頭に"being"が来る場合、省略するのが普通である。

ところが、当てた生徒は、

Having been brought up in America, she could speak Engish fluently.

と、答えた。完了形(の受動態)の分詞構文にしたわけだ。この生徒、母校の後輩でもあり、クラスではいちばんできる。彼にそう言われると、にわかに自信がなくなり、「先生」の特権で、答えを盗み見した。解答には、"brought"とある。私の直感で合っているわけだ。

鋭い生徒は、私の戸惑いを見逃さなかった。

「先生、どうして完了形じゃないんですか?」

こういうとき、いったん分詞構文を使わない形で、書き直してみるとよい。

(私の答え)
As she was brought up in America, she could speak Engish fluently.
(生徒の答え)
As she had been brought up in America, she could speak Engish fluently.

…場面にもよるが、どちらも使えると思う。先後関係を考えると、完了形を使ったほうがいいような気もしてくる。

だが、解答がただの"brought"になっていることもあり、その場は半ば強引に、説明をつけた。

なんとなく後味が悪かったので、帰ってきてから、ネイティヴの書いた洋書等を調べてみた。

すると、塾でも使っているバートランド・ラッセルの『ラッセル自叙伝』に、つぎのような文章を見つけた。
"He had been brought up in America, and was exceedingly sophisticated."
(彼はアメリカで育ったので、非常に洗練されていた)

完了形!!

どうも、生徒のほうに分がありそうである。解答「訂正」ではないが、この事実は、明日、生徒に伝えなければならない。