法廷へ

エクスターンで、毎日、張り合いのない(と言っては悪いが)民事事件を黙々とこなしていたが、昨日、担当の先生(弁護士)が、声をかけてくださった。

「明日、刑事の公判あるけど、法廷来るか?」

先生には、検察官志望だとは告げていない。が、顔に書いてあったのかもしれない。私は、目を輝かせた。

「はい、行かせていただきます!」

ちなみに、エクスターンでは、刑事事件は扱ってはいけないことになっている。学生も守秘義務を負っているとはいえ、刑事被告人の「人権」に配慮したものだ。だから、刑事については、ナマの事件記録は見せてもらえない。先生は、こうおっしゃった。

「傍聴くらいOKだろう、公開法廷なんだから」

事案は、業務上横領被告事件。被告人には、「不法領得の意思」(所有者でなければできないような処分をする意思。横領罪の「故意」のようなもの)がなかったから、そもそも横領罪の構成要件にあたらない、として、真っ向から争っている。被告人の部下だった者の証人尋問だったが、弁護人の反対尋問だけで、4時間かかった。

普段、刑事裁判の傍聴に来ると、どうしても検察官を応援してしまうのだが、今日は、弁護側の視点でストーリーを眺めた。法律的に、かなり微妙な事案ということもあり、裁判所にも「無罪」の心証をもってもらえるのでは、と期待したりした。途中、何度か、検察官が、いらいらした様子で、証拠調べに異議申し立てをするのが目立った。

横領は、殺人事件のようにドラマティックな展開があるわけでもなく、地味な事件だが、たまの刑事事件は、私にとって一抹の清涼剤のようなものだった。検察修習中の司法修習生に、なかなか美人の女の子がいた、というのも大きいのであるが。