陰男

私は、小5の時に、今では死語の「ワープロ専用機」を手にして以来、これを愛用してきた。中高時代の名文、もとい「迷文」は、全てワープロで作成している。

高1の時(平成10年)に、わが家でもネットとパソコンを導入したが、文書作成は自前のワープロと決まっていた。その後、大学に入ってからは、ワープロを使う機会はめっきり少なくなり、いつしか忘れ去られた存在となっていた。

ワープロで作成した文書は、これまた死語の「フロッピー」に保存してあるが、ワープロ独自の形式なので、パソコンでは読むことができない。家電には寿命というものがあり、ワープロもいつかは壊れる。そうなったとき、長年の蓄積が失われてしまうのは、大きな損失である。

そこで、ワープロがなんとか動く今のうちに、文書を順次パソコンに移すこととした。手順は、ワープロ専用形式の文書ファイルをいったんワープロで開き、MS-DOS形式で保存し直す。そして、それをパソコンの「メモ帳」で開く、という寸法だ。

単純だが、おそろしく時間のかかる作業である。途中で嫌にならないのは、ひとえに、昔の文書が面白いからだ。

今日は、そうやって発掘された自作小説の中から、短編「陰男」を紹介しよう。平成8年当時、私は、江戸川乱歩に心酔していて(もちろん、お子様向けの「少年探偵団」シリーズではなく、エロ・グロ満載の戦前の作品である)、乱歩を真似た小説を、いくつも書いた。

乱歩の代表作に「影男」という作品があるのをご存知の方も多いだろうが、このタイトルをもじって書いたのが、「陰男」である。なお、内容は完全にオリジナルである。

ちなみに、当時の私のペンネーム「須原正」というのは、乱歩の「影男」の登場人物の一人で、「殺人請負会社」の社長である。

それでは、この秋の夜長、「陰男」をどうぞお楽しみください。

http://hp1.cyberstation.ne.jp/gca_gr/novel/kageotoko.htm