忍ぶ恋

最近、『葉隠』にはまっている。『葉隠』は、宝永7年(1710年)頃、佐賀鍋島藩の家老・山本常朝が口授した、武士道徳の集大成である。

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という有名な一節は、ご存知の方も多いだろう。

葉隠』は武士の行動様式を規定したものだが、「酒の席での心得」など、現代にまで通用する実践的な教えが多々あることを知った。ちなみに私は、古文は大の苦手なので、原文・口語訳、それに三島由紀夫の解説つきの『葉隠入門』(新潮社、昭和42年)を読んでいる。

今日は、『葉隠』の中で、とくに印象的な一節を紹介する。

この前、寄り合ひ申す衆に咄し申し候は、恋の至極は忍恋と見立て候。逢ひてからは恋のたけが低し、一生忍んで思ひ死する事こそ恋の本意なれ。歌に
 恋死なん 後の煙にそれと知れ つひにもらさぬ中の思ひは

これこそたけ高き恋なれと申し候へば、感心の衆四五人ありて、煙仲間と申され候。