一期一会

旅行記」を書くのが好きな私は、他の人の日記やブログに旅行記があると、一緒に現地を旅している気分になり、ついつい「感情移入」して読んでしまう。

中高時代の後輩・T君が、先日、中国・新彊ウイグル自治区を旅してきて、その旅行記を書いている。T君は私と同じく「鉄道」が好きで、上海〜ウルムチ間4077キロを48時間かけて走る「シルクロード特快」にも乗り、中国鉄路の醍醐味を存分に堪能してきたようだ。

軽妙で、独自の着眼点のあるT君の旅行記は、いつも面白いのだが、今回は、ある種の感慨をもって迫ってきた。というのも、私自身、T君と同じルートで旅したことがあるからだ。

4年前の夏、初めてJALマイレージが2万マイルに達したのを契機に、台湾・香港・中国を一回りする旅に出た。当時は、台北−香港間にもJALグループのJAA日本アジア航空)が飛んでいたので、いったん台北でストップオーバー(途中降機)して台湾を回ってから香港へ、香港からは上海、ウルムチ、北京と全て列車で移動し(鉄道総延長・約1万キロ)、北京からJALで帰ってきた。

実はこの旅こそ、初めての「海外一人旅」だった。中国語など全くわからないまま、2週間以上、中国にひとり放り込まれ、大いに「免疫」がついたように思う。以来、世界中どこでも、一人で旅する自信がついた。

そしてT君も、今回が初めての海外一人旅だったらしい。世界中飛び回っても、旅の感動が薄れることはないが、何事も「初体験」は特別なものである。4年前の自分自身の体験がフラッシュバックして、懐かしさに浸った。

台湾の特急列車内では、流暢な日本語を話す老人に話しかけられ、戦後の日本の体たらくを諌められた。私が好んで使う「日本が溶けてゆく」という一言、実はこの老人の言葉である。

列車のきっぷを手配してくれたウルムチの旅行会社のおばさんはウイグル人だったが、一緒に漢民族の悪口を言い合った。
「…漢民族の性格は、何があっても変わりませんよ」
と、あきらめたように言われたのが印象的だった。

ウルムチ〜北京の列車内で、48時間ともに過ごした女子大生。当時の中国では珍しいキャミソールを着こなした、なかなかの美人で、寝台の「上段」から、彼女の「谷間」を何度覗き込んだかわからない。

…彼・彼女らは、今頃、どうしているだろう。また会いたいが、二度と会えない。だからこそいいのだ、と思う。