北朝鮮先制攻撃の可能性

将軍様」にとって、50年越しの悲願だった。

1956年、先代の金日成旧ソ連・モスクワ郊外の原子力施設を視察し、核開発への野心を顕わにしてから、ちょうど50年。その息子・金正日は、ついに「核」を手にした。

われわれは、今年7月の北朝鮮によるミサイル発射を受け、日本の安全保障上、北朝鮮の「脅威度」が上がった(わかりやすくいえば、暴発の可能性を否定できなくなった)と認識していたが、今回の核実験強行は、脅威の「質」を格段に高めるものである。もっとも、今回の実験が成功したのか(朝鮮中央通信は、「完全に成功」などと報じているが)、また、爆弾の威力等については、今後の精査が待たれる。

あの国が核を手にした以上、わが国の平和と安全を守るため、万一の場合を想定した研究を重ねる必要がある。北朝鮮は、弾道ミサイルに搭載できる小型核弾頭の開発には未だ成功していないとみられるが、今回の実験結果をフィードバックすることで、その開発が加速することは容易に予測できる。7月の「テポドン2」は、発射直後に爆発する完全な失敗だったが、弾道ミサイルと小型核弾頭が揃ったとき、北朝鮮は、いつでも日本の大都市を核攻撃することができるようになる。北朝鮮のミサイル基地が北東部に密集しているのは、「日本に最も近い地点」だからである。

いうまでもなく、かかる事態への「抑止力」として機能するのが、日米同盟に他ならない。北朝鮮が日本を攻撃した瞬間、北朝鮮全土は、たちまち灰燼に帰すのである。理性のあるまともな国なら、この段階で二の足を踏むだろう。

しかし、国家ぐるみでの拉致・爆弾テロなど、ビン・ラディンも裸足で逃げ出しそうな破壊工作を繰り返してきた北朝鮮が、「地球破壊爆弾」のスイッチを押す可能性は、否定できない。そのような兆候を察知できた場合、わが国としてはいかなる対応をとるべきか。

国際法上、国家が「自衛権」を発動するには、「武力攻撃」(armed attack)の発生が要件とされる。しかし、核による攻撃の場合にも、実際に攻撃を受けるまで反撃できないというのは、不合理である。核をはじめとする「大量破壊兵器」は、一撃で数十・数百万人を殺戮する威力を持っている。そのような侵害を甘受しなければならないというのは、著しく正義に反する。国家の存亡にかかわる緊急事態においては、「武力攻撃」の認定を前倒しし、攻撃が高度の蓋然性をもって予測される場合、敵のミサイル基地等を先制攻撃することも、個別的自衛権の発動として許されるとすべきであろう(侵略の定義に関する国連総会決議2条参照)。

United Nations General Assembly Resolution 3314 (XXIX). Definition of Aggression

Article 2
The First use of armed force by a State in contravention of the Charter shall constitute prima facie evidence of an act of aggression although the Security Council may, in conformity with the Charter, conclude that a determination that an act of aggression has been committed would not be justified in the light of other relevant circumstances, including the fact that the acts concerned or their consequences are not of sufficient gravity.
(国家による国際連合憲章に違反する武力の最初の使用は、侵略行為の一応の証拠を構成する。ただし、安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況(当該行為又はその結果が十分な重大性を有するものではないという事実を含む。)に照らして正当に評価されないとの結論を下すことができる。)

ところが、現在の航空自衛隊には、敵基地を攻撃する能力はない。「専守防衛」という空虚なスローガンが独り歩きした結果である。敵基地攻撃能力の保有について、改めて検討する必要があるとともに、これは日本国自身の問題であることを、われわれは理解しなければならない。いかに日米同盟が強固なものであっても、国防の義務を放棄したような国を、代わりに血を流して守ってくれるお人好しな国は存在しないのだ。

皇国の興廃は、まさにこの一瞬のわれわれの決断にかかっている。