高雄へ・2006秋

高雄


夕方、授業が終わってから、JRバスで高雄へ出かけた。紅葉にはまだまだ早いが、今週末まで、このようなライトアップイベントが実施されている。

高雄は、御室の仁和寺の奥から北山へ分け入り、旧京北町へと続く周山街道国道162号線)の御経坂(みきょうざか)峠を越えたところにある。四条からJRバス高雄・京北線に乗れば、40分で着く。

中学・高校時代、土曜日の放課後などは、自転車好きの仲間とともに、毎週のように高雄へ走りに出かけた。高雄・栂ノ尾を過ぎてそのまま北上し、京都市域最北(当時)の集落・杉坂から、京見峠(標高480メートル)を越えて、鷹峯、千本北大路へと下ってくるのが、メインルートだった。四季折々、市内中心部の喧騒と、木深い峠道のギャップが楽しい路線だった。

そういう次第で、「高雄」と聞くと、懐かしさを覚える。大学に入ってからは、とんと行く機会もなくなっていた。

17時10分。四条大宮から周山ゆきのJRバスに乗った。母校最寄り駅を通過し、立命館大学衣笠キャンパス龍安寺をかすめ、仁和寺に出たあたりで日が暮れた。いよいよ、かつて「乗務」していた区間だ。

私は、バスで一番前の席に座るのが好きなのだが(だから、旅先では路線バスの運転士と話す機会が多い)、今日は、ことのほか楽しかった。沿線の景色は、体で覚えている。ジグソーパズルのピースを、一つひとつ確認してゆく。

17時55分、高雄着。ひんやりとした空気が迎えてくれる。バスを降りたのは私ひとり。平日の木曜日に来る客など、もとよりいまい。いたとしても、クルマだろう。

紅葉シーズンには一大行楽地と化す高雄だが、程よい寂れ具合が、なんとも言えない。美しく明かりの灯った、神護寺への参堂を歩く。あまりひと気がなさ過ぎるも不気味だが、意外にも若い女性グループなどもいる。

川沿いに置かれた板べりに腰を下ろし、心地よいせせらぎの音をBGMに、青々としたもみじのライトアップなどをぼんやり眺める。景色など、5分も眺めれば飽きるものだが、帰りのバスまでの1時間、ずっとそうしていた。