古き良き…

4年前の我が家建て替えに伴う引越以来、物置にしまい込まれていた「レコードプレーヤー」を、父親が引っ張り出してきた。引越時に、壊れかけだったアンプを処分してしまったので、RCAのケーブルで、リビングのテレビに接続してみた。

「CD」と同い年でもある私は、物心付いた時にはCD時代だったが、両親が大量のLPレコードを所有していたため、昔はレコードをよく聴いていた。クラシックなど、レコードで慣れ親しんだ曲をCDで聴くと、乾いた「シャカシャカ」した音に聴こえて仕方がなかった。CDは、人間の耳には聞こえないとされる高周波数帯域をカットしているが、実は聞こえているのだ、とも言われる。いつの間にか、CD独特の音に耳が慣らされていった。

数年ぶりに扱うレコードは、新鮮だった。厚紙のジャケットには、蓄音機の前に犬が座り、亡くなった主人の声を聴いている"HIS MASTER'S VOICE"の「ビクター」のロゴが、カラーで印刷されている。ビニールにくるまれたレコードを取り出し、レコードクリーナーで埃を掃ってから、ターンテーブルに載せる。針を動かすと、ターンテーブルが回転を始める。刻まれた溝を「読んで」、聴きたいところに慎重に針を下ろす。

プチ、プチという懐かしい雑音の後、スピーカーから流れてきた音には、しっとりとした艶やかさがあった。ああ、この音だ、と思う。雑音は多くても、いい音だ。それは、JRのスマートな新型車両のなかにあって、重厚に作り込まれた国鉄型車両の持つ魅力にも似ている。遥かなる「昭和」の香りである。