「鉄の女」

先日、英国の議会内に、その強い意志とリーダーシップから「鉄の女」と呼ばれた、サッチャー元首相のブロンズ像が設置された。存命中に像が置かれるのは、英国の長い歴史でも初めてだそうだ。

久しぶりに、元気な姿を見せたサッチャー元首相は、堂々とした口調で、

"I might prefer IRON, but BRONZE will do.
(Because) it won't rust."

(「『鉄』のほうがいいけれど、『ブロンズ』もいいわね。
錆びないから」)

と、笑いを誘ってみせた。

ところで、韓国紙の報道によれば、先般の「6ヵ国協議」での米朝の直接対話で、ライス国務長官の訪朝も話し合われたという。

来日したチェイニー副大統領は、横田めぐみさんのご両親とも会談し、「拉致問題についての日本政府の立場を支持する」と約束してくれてはいる。だが、ラムズフェルド前国防長官の辞任以降、ブッシュ政権内のいわゆる「ネオ・コン」陣営は影を潜め、対北「宥和」派が勢力を拡大しつつある。

それでも、「圧力」重視の安倍首相の姿勢がぶれないのは立派だが、足元の自民党内には、山崎拓氏や加藤紘一氏のように、「北朝鮮へのエネルギー支援に日本も協力すべきだ、さもないと国際社会で孤立する」といった、典型的な「バスに乗り遅れるな」論も聞かれる。

わが国が、拉致の完全解決を北朝鮮に強く要求することで、国際的に孤立する、などというのは、まったく「世迷い言」というほかない。日本にとって、北朝鮮と国交創設を急ぐメリットは、何一つないのだ。「将軍様」が、一方的に、日本の資金・技術を渇望しているにすぎない。日本政府は、「拉致が解決されない限り、支援はしない」という、"Wait & See"(機を待って、見届けよ)の姿勢を、とことん貫けばよいのである。

昨年の中間選挙での民主党の躍進を受けて、弱気になったブッシュ政権は、北朝鮮の「テロ支援国家」指定の解除まで約束してしまった。

1980年代、日本の中曽根康弘首相、合衆国のレーガン大統領と足並みを揃え、「保守・新自由主義」を貫き、東西冷戦に打ち勝った「鉄の女」・サッチャー元首相は、混迷深める国際社会を、どのようにご覧になっているのだろう。