石原都知事に奏上す

石原慎太郎東京都知事は、4月の都知事選に向け、自民党の推薦を辞退することを正式に申し入れた。長男の伸晃氏が会長を務める自民党東京都連は、1月初め、党本部に推薦申請したが、都知事は「いかなる政党の推薦も受けずに戦う」と表明していた。

私は、石原都知事と政治思想面で共感するところが多く、わが国を代表する論客である石原慎太郎氏が、「東京都知事」という要職を務めることを、支持してきた。なかでも、悪化の一途をたどっていた治安対策の強化(警視庁警察官の増員・警察庁出身者の副知事起用など)は、石原氏ほどの「闘う政治家」でなければ、実現できなかったと思う。

ところが、ここ最近、いくつかの事象をめぐる都知事の発言には、首を傾げることが多くなった。報道内容が全て正確ではないだろうし、仮にそうであったとしても、大騒ぎするほどの問題ではないのだが、都知事の説明は、いかにも歯切れが悪い。記者からの質問に、腹の立つことが多いのは察するが、言い訳めいたその口調は、「石原慎太郎」らしくない。

前二回の選挙では、圧倒的な得票で当選した石原都知事だったが、やや逆風が強まってきたことと、「政権」奪取を目指す民主党の動向を睨み、自民党の推薦を受けないほうが、かえって「無党派層」にアピールできる、と判断されたのかも知れない。

僭越ながら、石原氏のファンとしてあえて申し上げるが、三選不出馬を検討されてはいかがか、と思う。「絶対的権力は、絶対的に腐敗する」という、政治学の格言がある。私が学部の1年生だった時、その年で退官される村松岐夫教授(行政学)の講義で、最も印象に残っているのが、この言葉だ。もちろん、石原氏が腐敗していると言うつもりは、毛頭ない。だが、「権力」というのは、それほど恐ろしい、「麻薬」なのである。

石原氏には、天下国家を論じる能力がある。都知事よりふさわしい活躍の場が、あるように思えてならない。いっそ、トンチンカンな発言で物議を醸す久間氏に替わって、防衛大臣というのは、どうだろう。