現実を見よ

「問題教師」としてしばしば取り上げられる例に、日教組の左翼思想に染まった小学校の先生の話がある。自らが担任するクラスで、「お父さんが自衛隊の人は手を挙げなさい」と言って、児童に手を挙げさせては、「あなたのお父さんは人殺しです」などと、自虐史観を喧伝するものである。ここまでひどい教師は、名誉毀損罪で告訴すればよいが、類似の事例は、枚挙にいとまがない。私自身、小学校5年生の時、「好きな歴史上の人物の肖像画を書きましょう」という課題で、日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃破した東郷平八郎連合艦隊司令長官を選ぼうとしたら、担任の先生に「軍人はだめ」と言われたのを、よく覚えている。

そういう思想の人たちは、新潟の被災地で、給水や捜索・救助活動にあたる陸上自衛隊の姿に、何を思うのだろう。

ひょっとしたら、警察・消防、それで足りなければ、民間ボランティアの力によるべきだ、と考えているのかもしれない。しかし、ただでさえ過酷な状況が続く被災地に展開し、活動を継続するには、指揮命令系統がしっかりし、兵站ロジスティクス)の確保できる組織でなければならない。そうでなければ、足手まといになるだけである。

現実問題として、大災害の復興は、自衛隊なしでは始まらないのだ。「反戦平和」思想を抱くのは勝手だが、現実から目を背けてはならない。

厄介なのは、現実を見ようとしないのが、左翼だけではないことである。平成16年、中期防衛計画大綱の見直しにあたり、財務省の官僚は、陸自定員の削減を迫って、こう発言したという。「極東ソ連軍が北海道に上陸侵攻してくるような時代ではないのだから、陸自はもっとスリム化すべきだ」と。

見当違いも甚だしい。相次ぐ災害派遣に加え、安保理決議に基づく多国籍軍や国連平和維持活動(PKO)への参加など、陸自の活動範囲は、広がる一方なのだ。

贖罪史観に目を曇らせた日教組の先生に、数字だけを追い求める財務官僚。現実を見ようとしない人たちが、この国を蝕んでゆく。