真っ向サービス

書きかけのアフリカ旅行記の続きはまだか、と催促されそうだが、今日は、いまの職場(JR西日本)のことを、守秘義務に反しない程度に語ってみたい。

JR西日本」といえば、ある意味「日本一有名な」鉄道会社であり、お客様にもさまざまな人がおられるから、なかには、「そんなんやから事故起こすんじゃ、ボケ!」などと、捨て台詞を吐いて電話を切られる方もいる。覚悟はしていたが、こういうことを言われるのは、やはりショックである。次の電話が鳴っていても、しばらく応答したくない時もある。

それでも、JR西日本の就活時代、リクルーターさんに「現場は刺激的で楽しいよ」と言われたとおり、お客様の問い合わせは実に多様で、飽きることがない。

岡山県のあるローカル線の沿線住民の方からは、「線路築堤の草が伸び放題で、蚊が大量発生して困っている。なんとかしてくれ」とのお叱りを受けた。駅係員に落し物の申告をしたら「そんなん見つかるわけないワ」などと暴言を吐かれた、という女子大生には、心から謝るとともに、上司に報告書を提出した。

傷害事件を捜査中の刑事さんから電話がかかってきたこともある。おそらく、先方では「電話聴取報告書」を作っておられるのだろうな、と想像しながら、JR西日本を代表して回答するのは、緊張した。

きょう、珍しい電話がかかってきた。それは、先の参議院選挙で当選した、ある議員の秘書の方からで、「国会議員パスをまだ貰っていないが、当選証書を見せれば、JRに乗れるのか」というお問い合わせだった。

この答えは、「時刻表」にはもちろん「旅客営業規則」にも載っていないので、さすがの私でも即答はできない。折り返しお電話することにして、いったん電話を切った。共有のキャビネットから、「営業関連通達集」というファイルを引っ張り出してきてページを繰ると、「当選の事実が認定できるときは、特別補充券により対応する」という一文を見つけた。「補充券」というのは、手書きのきっぷのことである。

さっそく、先方に回答するとともに、駅窓口での混乱を防ぐため、駅にもあらかじめ連絡しておくことにした。

私は、「鉄電」(JR電話)で、ある新幹線駅の駅長事務室を呼び出し、かくかくしかじかなので、粗相のないように、と伝達した。

「JRになって、国鉄時代とは見違えるようにサービスが良くなった」と、一時期いわれた。けれども、いまは、「航空会社などと比べると、JRはまだまだだ」と、お客様の見方は再び厳しくなっている。

まだまだ、まだまだ、やらなければならないことがある。「お客様第一」で、信頼される鉄道会社になるために―。