夏の終わり

冬をこよなく愛し,夏の暑さが何より嫌いな私は,これまで,過ぎ行く夏への未練など感じたことがなかった。蒸し暑くて,うっとうしいだけの夏など,早く去ってくれと思っていた。

ところが,今年は,猛暑日も熱帯夜もない秋田で過ごしたせいか,「夏の終わり」に,ことのほか寂寥感を覚える。短かかった夏への愛おしさだろうか。

8月最後の週末,秋田の同期全員で白神山地に行ってきたが,1本のススキに,日本海に沈む夕日が淋しさを投げかけていた。

昨日,同じ班のメンバーと,秋田市内随一の焼肉店に行ってきた。私は,秋田最後の夕食会くらいにしか思っていなかったが,私の誕生日(9月8日)祝いを兼ねてくれていたらしい。食い散らした後に,突然,秋田・角館の桜皮細工のペン立てをプレゼントされ,
「同期を思い出して,将来,執務机に置いてくれ」
などと言われては,滅多なことでは感動しない私でも,目の前が霞んだ。

昨年11月,秋田に赴任してきた時は,住み慣れた関西を離れる淋しさでいっぱいだった。だが,今は,秋田を離れる淋しさしかない。