秋田修習に悔いなし

秋田は,今日の午後から,冷たい雨が降り始めた。昨日から気温もぐっと下がり,秋をすっ飛ばして冬の走りのような,そんな天気である。

明日の引越しに備え,荷造りを終えてがらんとした部屋は,一段と寒々しく,人恋しさが募る。

私は,秋田に来て間もないころに書いた日記を読み返してみた。

平成19年11月16日付け「秋田市民になりました」http://d.hatena.ne.jp/stationmaster/20071116/1195221866/

平成19年12月2日付け「秋田での一週間」http://d.hatena.ne.jp/stationmaster/20071202/1196611410/

法曹実務家の先輩方から,異口同音に「実務修習地は一生の思い出になる」と言われていたものの,このころの私は,半信半疑だった。骨の髄まで関西人の私は,結局,秋田になじめないまま,この地を去ることになるんだろうな,などと思っていた。

旅にしても,何にしてもそうだが,物事の前半は時の過ぎるのが遅く,後半になるにつれ,加速度的に速くなってゆく。この10か月は,まさにそんな感じだった。

毎朝,雪の積もった道路を「ゴム長」(長靴)を履いて歩いて通勤し,裁判所に着いてから革靴に履き替えていた第一クールの2か月は,とても長かったように思う。実際には,年末年始の休みが間にあって,最も短いのに,である。

10か月間,それなりに勉強もしたが,それ以上に,実際に扱った事件を通して,人間ドラマの機微を見ることができたのが,実務修習の一番の収穫だった。名もなき市井の人々にも,語り尽くせぬ人生がある。不本意に命を絶たれた被害者は,その最期に,何を言いたかったのだろう―。

私は,「検事」という中学3年のころからの夢を追いかけ,秋田に来た。そして,紆余曲折はあったが,夢の実現まで,なんとかあと一歩に迫った。好運と天祐に,ただ感謝するばかりである。

秋田で成し遂げられなかったこともあるが,それはそれ。もう,秋田に思い残すことはない。残るのは,ただ,良い思い出だけ…。