その時,歴史が動いた

ご承知のように,今年5月から,裁判員裁判がスタートする。「サイバンインコ」なるキャラクターまで登場して,広報に余念がない。

裁判員制度の施行を見据えて,検察庁では,裁判員裁判での公判維持のシミュレーションを重ねている。具体的内容については書けないが,従来の刑事裁判から,180度方針転換するところもある。

私などは,実務に就いた初年度から裁判員制度とともに歩むことになるので,違和感は少ないが,先輩方の戸惑いは,いかばかりかと思う。国鉄がJRになった時の国鉄マンの心境にも通ずるものがあるに違いない。

裁判員制度について,私が個人的にどういう見解を抱いているかは,以前の小欄で書いたとおりで,その考えに変わりはない。しかし,実務に就いて改めて思うのは,失敗を制度のせいにすることは,プロとして許されない,ということだ。

いやしくも,検察が裁判員裁判に対応できない結果,真犯人が無罪になるような不正義を許せば,被害者が悲しむのはもちろん,国民も納得しないだろう。我々が手を抜けば,困るのは国民である。我々は,税金からお給料をいただいている以上,国民の期待に応えるべく研鑽を積まねばならない。

刑事裁判は,今年,大きく変わる。そして,私自身の心の持ちようも,修習生時代から少しばかり,変化したのかもしれない。