リーダーたちの言葉2009

小欄では,毎年,JRグループ本州3社(東日本・東海・西日本)の入社式におけるトップの一言を紹介するのが恒例になりつつある。今年も,本州3社とJR貨物の社長挨拶(JR東海は葛西会長も含む)を紹介しよう。

たかが挨拶,されど挨拶。短い一言の中に,国鉄改革から22年を経たそれぞれの企業風土や,リーダーとしての人となりが色濃くにじみ出ている。去年も書いたことだが,JR東日本はダイナミック,JR東海の自信と誇りは,まばゆいばかりだ。

JR東日本・清野智(せいのさとし)社長

「当社の『グループ経営ビジョン2020』では、挑む、チャレンジするという言葉をサブタイトルに掲げている。今では第3の柱となっているSuica事業は、20年ほど前にわずか数人の社員の夢からスタートしたが、日本全国にまで広がった。このプロジェクトは、チャレンジ精神が推進力になっており、皆さんも大きな夢と志を持って、お客さまサービスに向けてチャレンジしてほしい。当社グループの今の姿は、これまで先人たちが種をまき、苗を育てた結果、花開いたものだ。未来に大きな花を咲かせるために、われわれとともに種をまき、苗を育てよう」

JR東海葛西敬之(かさいよしゆき)会長

東海道新幹線と12の在来線を不断の努力で維持、強化することが使命。国鉄時代に比べて飛躍的に発展し、他の追随を許さない高速鉄道会社になったが、いったん気を緩めるとその日から退化が始まる。今、大きな夢(東海道新幹線バイパス)に向かって踏み出しているが、それを担うのは皆さん。一刻も早く一人前の社員になり、進むことを期待する」

同社・松本正之(まつもとまさゆき)社長

「鉄道の仕事は安全と安定という土台の上に成り立っており、決められたことを守ることが大切。多くの仕事が組み合わさっているのでチームワークや総合力も重要。世の中の経済は混乱しているが、こういう時期こそ力をため、次への飛躍に向けて準備しなければならない。仕事を通じて世の中に貢献するという気持ちを大切に、難しかったり避けたいことにも真正面から取り組んでほしい。時間は皆に平等にあるが、いかに使うかによって成長の度合いも変わる」

JR西日本山崎正夫(やまざきまさお)社長

「鉄道の根幹は安全確保にあり、私たちはお客さまの尊い命をお預かりしていることを片時も忘れてはならない。安全は多数の社員の努力と膨大な設備からなる複雑なシステムの上に成立しており、1日も早くその道のプロになれるよう日々努力を積み上げてほしい。当社は安全性向上と並び変革の推進に取り組んでおり、自らが新しいJR西日本を変える、創るという気概を持ち、考え行動してほしい。会社を取り巻く経営環境は大変厳しく、また信頼回復に向けた道のりも険しいが、自らの力で乗り越えなければならない。大きな変革期こそ若い力が必要であり、安全で信頼されるJR西日本を創り上げ、持続的発展と社会貢献に向け、大きな役割を担ってほしい」

JR貨物・小林正明(こばやしまさあき)社長

「新入社員の皆さんには3つのことをお願いしたい。1つ目は安全第一ということ。安全は交通運輸業の最大のテーマであり、勝手な思い込みや行動はけがや事故を引き起こす。常に安全意識を強く持ち、自分の身は自分で守るという意識を持ってほしい。2つ目は何事も基本をきちんと身に付けること。3つ目は、知識、業務、技術力、ノウハウをどん欲なまでに習得すること。1日も早く職場にとけ込み、先輩たちから知識を学び、早く自分のものにしてほしい。世界同時不況の影響をまともに受けて、危機的な状況になっているが、一方で鉄道貨物は環境に優れた輸送機関として注目を集めつつあり、まさにこれからが鉄道の出番だ。JRマンとしての大きな誇りを持つと同時に、企業人としての責任感、自覚を持って、大いに活躍してほしい」