満鉄の夜

stationmaster2006-01-07


長春(以下、日本時代の「新京」という)から大連へ向かう夜行列車の中で、これを書いている。中国の鉄道に乗るのはこれで最後だ(少なくとも長距離は)。新京〜大連間は満州国成立前からの満鉄のメインルートで、締め括りにふさわしい。

今日は一日、新京の街を歩いて、日本時代(満州国)の遺構を探し求めていた。なかでも、満州国の司法部や、最高検察庁の庁舎などは、独特の感慨をもって迫ってきた。世が世なら、ここに勤務する機会もあったのか、と思うと(満州国には、日本の検事が「出向」していた)。

ハルピンの−20℃に比べると、−10℃の新京は暖かくも感じられた。しかし、この気温の中にずっといると、いろんなトラブルが発生する。カメラにフィルムを入れ換えようとしたら、ネガが凍っていて、36枚撮りのところ、16枚巻いたところで動かなくなってしまうし(ブチッと切れなかっただけ、よしとしよう)、携帯のカメラは全く機能しない(画像が映らず、液晶が黄緑色一色になる)。携帯は、ズボンのポケットに入れて温めるようにしたが、一度、文字通り「フリーズ」してしまい、電池パックを外して強制終了。となった。

ところで、今乗っているのは、新京2025発・大連706着の「快速」N134列車の「軟臥」車である。快速とは、JRでいう急行に相当し、この上に「特快」がある。私は、3年前に中国の鉄道に1万キロほど乗ったことがあるが(香港〜上海・上海〜ウルムチウルムチ〜北京)、この時は全て「特快」だった。

特快は、冷房つきで、白と青の塗り分けのスマートな新型客車(時速160キロ対応)が使われるが、快速は、冷房のない、緑色の客車(時速120キロ)が使われる(中国の長距離列車は、日本のような電車・気動車は皆無で、全て、機関車牽引の客車列車である)。

「軟臥」とは、JRでいうA寝台(設備的には2段式B寝台)で、最高クラス。以下、「硬臥」(かつて日本にもあった客車3段式B寝台に相当)・「軟座」(グリーン車)・「硬座」(普通車)と続く。夜行長距離列車には、軟座は連結されていない。

今回の旅では、初日のシェンヤン〜ハルピンは軟座、ハルピン〜新京と、今乗っている夜行は軟臥にした。硬臥には、ウルムチから北京まで50時間乗ったことがあり、中国人民と大いに触れ合え、それはそれで楽しかった。が、そこそこ快適さを求める人には、軟臥をお薦めしておく。

ちなみに、この列車は、後から来る特快4本に抜かされる。私は「時刻表」の愛読者だから、こういうことは一大事だが、一般人は気にも留めないようだ。

写真は、新京の路面電車。この車両は、日本時代からの生き残りである。