アーカイブス「変わった世界 変わらない世界」

本稿は、平成14年9月11日、「9・11」1年を機に、ホームページ「主張」に掲載したものである。いみじくも、ここで指摘したことは、4年経った現在の国際情勢にも当てはまることが多い。合衆国同時多発テロから5年を迎える今日、改めて掲載する。

あのおぞましいテロ事件から、ちょうど1年になる。あらゆるメディアが、ニューヨーク発、そしてカブール発のリポートを送り、この1年の動きを伝えている。あのテロが起こる前は、どれほどの人が、アフガニスタンという国を、そしてその首都カブールを、知っていただろうか。

この1年、世界は確実に変わった。東西冷戦の終結ソビエト連邦の崩壊後もっとも大きな変化であるのはいうまでもなく、その大変革が21世紀の幕開けの年に起ころうとは誰が想像したろうか。テロ対策をめぐる国際協調は、合衆国とその同盟国との関係を新たなものにした。冷戦の終結で、ともすれば存在意義が薄れつつあったNATO北大西洋条約機構)は、いまや役割を180度転換、新たなパートナーとしてロシア連邦を迎えようとしている。旧ソ連領でロシアの「裏庭」である中央アジアの国々に、合衆国・英国をはじめとするNATO軍が駐屯している現実を、ほんの1年前に、誰が夢にも見たろうか。

わが国も、徐々にではあるが変わりつつある。戦後、経済成長第一主義のもと、絶望的な、そして退廃的な平和ボケに支配され、左翼勢力がなぜか「有識者」とされる事態が続いていたが、ようやく、狂った戦後民主主義教育の罪過を見つめ直す時がきた。溶けてゆくいっぽうだった、日本。ここで踏みとどまることができるか、いまこそ正念場である。独立国であるのに軍隊も持てず、国旗・国歌に異常なアレルギー反応を示す非国民が英雄視され、国益追求を打ち出すこともできず、国家首脳が中韓などアジア諸国詣でに通いペコペコと頭を下げる。とにかく、異常きわまる国だった日本にも、一筋の光明が見えてきた。有事法制は、なんとしてでも成立させなければならない。憲法改正自衛隊再編・国軍創設も議論を深めるべきだ。朝日新聞共産党など左翼勢力に、手をこまねいている暇はない。その間にも、日本は溶けてゆく。

あのテロのあと、耳にしない日はない「世界は変わった」という一言。けれども、変わらない世界があることにも、気づかねばならない。人種・民族対立、宗教対立、そして、環境問題も絡んだ南北問題。紛争の火種は、世界中でくすぶりつづけている。パレスティナ問題は、くすぶるどころか、大火の真っ只中である。

1年前、われわれは、「21世紀、それは決してバラ色ではない。『終わりなき戦争』の始まりだ」と書いた。その状況は、当時のまま、何も変わっていない。われわれは世界のために何をすべきか、そして、日本という国は、世界の中でどこへ向かうのか。合衆国中枢同時テロから1年を迎えるきょう、改めて考えたい。

最後に、24名の日本人を含む、テロの犠牲となった方々のご冥福を、心よりお祈りいたします。