不当利得

いわゆる「失念株」の処理に絡み、興味深い最高裁判決が出ました。

 不当利得の制度は,ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に,法律が,公平の観念に基づいて,受益者にその利得の返還義務を負担させるものである(最高裁昭和45年(オ)第540号同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。

 受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し,その後これを第三者に売却処分した場合,その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると,その物の価格が売却後に下落したり,無価値になったときには,受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが,これは公平の見地に照らして相当ではないというべきである。また,逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには,受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが,これも公平の見地に照らして相当ではなく,受けた利益を返還するという不当利得制度の本質に適合しない。

 そうすると,受益者は,法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。大審院昭和18年(オ)第521号同年12月22日判決・法律新聞4890号3頁は,以上と抵触する限度において,これを変更すべきである。


http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070308130124.pdf


一見、会社法上のテクニカルな問題かと思いきや、不当利得の「受益」の意義について、大審院判例(大判昭和18.12.22)を変更し、一般性のある判示をしており、法学徒にとって参考になるものと思われます。

同時に、不当利得の制度趣旨として、「公平説」が、民法学説からどれだけ批判されようとも、「判例理論」として固まっているのが再認識できます。