あれから6年―岐路に立つ日本

21世紀の幕開けとともに、世界を一変させた「9.11」から、まる6年が経った。折しも日本では、期限切れが迫った「テロ対策特別措置法」の延長をめぐって、政界は上を下への大騒ぎである。

民主党の小沢党首の魂胆は見え見えだ。「テロとの闘い」において、日本が果たすべき役割を正面から論ずるのではなく、この問題を「政局」にして、解散総選挙に追い込もうというものだ。ついこの間まで、インド洋における給油活動は、国連の安保理決議に基づくものではないから駄目で、アフガニスタンに展開している多国籍軍ISAF」に参加すべき、と論じていたのに、きょうになって、「事実上の軍隊である自衛隊を、海外に派遣することが問題」などと、主張を豹変させたことからも明らかである。

この問題を論じるにあたって、まず最初に、国際法上の論点を明確にしておく。自衛隊は、武力行使をするために派遣されるわけではない以上、国連による決議は、もとより不要である。一方で、地上に展開する平和維持部隊(アフガンの場合、ISAF)は、武力行使を本来任務とするわけではないが、敵対勢力から攻撃を受けた場合には躊躇せず反撃(武力行使)することができるよう、安保理決議に基づいて派遣される例が多い(もっとも、法的には、受入れ国たるアフガニスタンの同意がある以上、決議は不要である)。

したがって、小沢氏の従前の主張は、国際法上なんら根拠がなく、かつ、ISAFに部隊を派遣しているNATO軍に人的被害が相次いでいる現実をも無視した謬論であり、一顧に価しない。

ことの本質は、人類共通の敵であるテロに対して、わが国がどういう姿勢を示すか、である。内政の混乱で自衛隊を撤収すれば、テロリストに対して誤ったメッセージを送ることになる。卑劣なテロを繰り返すことで、国内を混乱させれば、部隊を撤収させられる、という先例にもなりかねない。どこかの半島の国は、アフガニスタンで民間人を人質にとられ、2000万ドル(23億円)もの「身代金」をタリバンに支払った。人質は還ってきたが、いまごろ、その金は、市民を無差別に殺戮する爆弾に化けている。

海上自衛隊による給油活動は、合衆国だけでなく、インド洋に展開する各国から評価されており、ドイツ・パキスタンなどからも、活動継続を求められている。ドイツといえば、イラク戦争をめぐって、合衆国と鋭く対立し、フランスとともに、ラムズフェルド前国防長官をして「古い欧州」と言わしめた国である。

自衛隊の海外派遣=対米追従」と短絡的に結びつける左翼の人たちは、こうした事実を知らない。不幸にも彼らは、「憲法9条墨守」で平和が保たれると盲信しており、現実を見ようともしないのである。さすがに小沢氏は、ここまでひどい認識ではないと信じたいが、駐日合衆国大使をカメラの前に「さらし者」にするなどして、「反米」派を焚きつけている。

朝日新聞をはじめ左翼メディアは、首相の靖国神社参拝をめぐっては、中国・韓国を刺激するからやめろ、と言い、一方で、「反米」思想に毒されるあまり、テロにも屈する主張をする。問題を主体的に考えようとしない、「思考停止」の典型例である。