レールが結ぶ,アフリカ大陸。

ジンバブエからザンビアに向かう貨物列


きょう,横浜で第4回アフリカ開発会議TICAD)が開幕した。アフリカ53ヵ国のうち,無政府状態が続くソマリアを除く52ヵ国が代表団(うち,40ヵ国は首脳クラス)を送り込んでおり,アフリカ諸国との関係強化をめざす日本にとって,またとない好機である。

以前,小欄で「日本人にとってのアフリカは,21世紀の今も『暗黒大陸』」と書いた。サハラ砂漠以南のいわゆる「ブラック・アフリカ」では,1日1ドル以下での生活を強いられている人々が3億人(人口の80%)もいる。だが,日本で,こうしたアフリカ情勢がニュースになることは,ほとんどない。

福田総理は,アフリカ向けODAの倍増を表明した。そのことじたいは結構だが,従来のように,場当たり的なODAを垂れ流し続けても,貧しい人々の生活基盤整備にはつながらない。中国は,エネルギー資源欲しさに,AUアフリカ連合)本部ビルを丸々寄贈したり,アンゴラに中国人労働者を大量に送り込んで政府庁舎を建設したりしているが,こうしたパフォーマンスに終わっては,元も子もないのである(その中国に,わが国が昨年度までODAを続けていたことも,大いに問題ではある)。

私は,ちょうど1年前,南部アフリカ4ヵ国(ジンバブエザンビアナミビア南アフリカ)を旅した。なかでも,近年の「農地改革」の失敗と干ばつで,深刻な食糧不足の続くジンバブエを,呑気に旅することには,罪悪感をも覚えた。しかし,アフリカの実状をこの目で見て,従来型の「経済援助」では解決できない問題を垣間見た。

例えば,内陸国ザンビアは,銅などの金属を南アフリカ方面に輸出し,石油・機械類を輸入しているが,これらの大半は,トラック輸送である。私は,ジンバブエザンビア国境の「ビクトリアの滝」から,バスでザンビアのリビングストンに入ったが,途切れることのない大型トラック(ちなみに,イギリス英語圏なので「トラック」ではなく「ローリー」だが)の車列に,目を見張った。

実は,南アフリカからジンバブエを通ってザンビアまでは,英国植民地時代に建設された鉄道も通じている。ブラワヨ−ビクトリアフォールズ間で私も乗った鉄道である。

しかし,ジンバブエ国内の軌道・信号設備の整備状態は劣悪で,2年前には,旅客列車と貨物列車が正面衝突して大量の死者を出すなどしており,安全・安定輸送は望むべくもない状況である。

鉄道が,大型トラックに替わり,旺盛な貨物需要に応えられれば,輸送単位あたりのCO2排出量削減だけでなく,現地で慢性的に不足しているガソリンも,庶民に行き渡りやすくなると考えられる。また,鉄道会社による安定的な雇用創出も期待される。

もとより,鉄道復権は,インフラ整備だけで成し遂げられるものではない。列車を安全に,ダイヤ通りに走らせるためには,まずもって政情の安定,民度の向上が不可欠であり,こうした分野への援助は,アフリカの「自立」支援そのものといえる。

二条の輝くレールが,暗黒大陸に光をもたらす―。一鉄道ファンとして,それが実現すれば,どんなにか素晴らしいだろうと思うのである。