敦賀ゆき「新快速」はいらない

http://d.hatena.ne.jp/nmasa/20060420/1145545006

nmasaさんが書いているように、JR西日本は19日、今年10月21日から、敦賀まで「新快速」電車を直通させると発表した。地元が喜ぶのはともかく、私は、鉄道の適正な発展という観点から、これには反対である。

なんといっても、JRにとって費用対効果は限りなく小さいか、マイナスであるということだ。「新快速」を直通させるのに必要となる、北陸本線の交流2万ボルトから直流1500ボルトへの電源切り替え工事費用は、大半を地元が負担したが、今後運営してゆくのは、JR西日本である。

はっきり言うと、京阪神から敦賀へは、「特急」を使ってもらいたい。湖西線北陸本線には、「サンダーバード」「雷鳥」が、30分ないし1時間ヘッドで走っている。高速輸送サービスは、これで十分である。

多少時間はかかっても、安く行きたい、という需要はもちろんあろうが、今でも、長浜での乗り換え一度で済む。敦賀は、恵まれているほうである。

「新快速」が直通すると、京阪神敦賀の需要も増える、というのは幻想にすぎない。直通当初こそフィーバーするだろうが、全体のパイが増える要素は、全くない。

そういう状況で、「新快速」が1時間に1本走ると、どうなるか。これまで、敦賀から京都や大阪まで特急を使ってくれていた人たちが、「新快速」に逸走することが考えられる。とくに、特急の「自由席」の利用者層(つまり、速く行きたいが、少しでも安いのを好む層)を考えると、富山や金沢始発で、敦賀からは座りにくい特急に、わざわざ特急料金を払って乗るより、始発で確実に座れ、かつ、普通運賃だけで乗れる「新快速」にしよう、となるのは、目に見えている。

すなわち、JR西日本としては、これまで得ていた特急料金収入を、失うことになる。

悪夢のシナリオは、これだけではない。「青春18きっぷ」のシーズンには、普通列車を乗り継いで北陸をめざす若者(最近は、シニア層も増えてきたが)が多い。彼らにとって、敦賀まで乗り換えなしで座ってゆける「新快速」は、好評を博すに違いない。しかし、いくら「青春18きっぷ」利用者が喜んでも、JRの収入は1円たりとも増えない。

本来、「新快速」は、私鉄と対抗するなかで生まれた、京阪神の都市圏輸送のための列車である。敦賀など北陸方面への長距離客は、ターゲットとしていない(特急に乗っていただくのが原則)。いま以上に長距離客が「新快速」に乗るようになれば、ただでさえ混んでいる「新快速」がますます混むようになり、私鉄と競合する京阪神におけるサービス低下につながる。

そうすると、例えば、大阪−京都間でも着席したいお年寄りなどは、JRは混んでるから、確実に座れる阪急や京阪で行こう、ということになりかねない。JR西日本は踏んだり蹴たりである。

わからないのは、素人はともかく、鉄道に詳しい友人までも、「新快速」の敦賀直通に賛成していることである。夢を見すぎではないかと思う。鉄道会社の経営は、「石橋を叩いても渡らない」くらいがよい。何よりも大切な「公共交通」としての使命を、末永く全うするためにも。