さようなら「鉄道連絡船」

JRグループ旅客6社の運送約款である「旅客営業規則」が,4月1日付けで,ささやかだが,ほぼ全編にわたる改正が行われた。あちこちの条文にあった「列車等」という用語から「等」の一文字が削られ,「列車」に改められたのだ。

参照・JRグループ旅客営業規則(冒頭部分を除いて,ほぼ6社共通)
http://www.jreast.co.jp/ryokaku/index.html

こう書くと,詳しい人はピンと来るだろう。

今月1日から,広島県宮島航路(宮島口〜宮島)がJR西日本の直営から「JR西日本宮島フェリー」という子会社に移管されたことによるものだ。航路自体は今も残るけれど,JRグループ国鉄から継承した「鉄道連絡船」は,全て消滅したことになる。

3月31日まで通用していた旧旅客営業規則3条3号は,「『列車等』とは、旅客の運送を行う列車及び連絡船をいう。」と定義していたが,現行規定は,「『列車』とは、旅客の運送を行う列車をいう。」と,書かずもがなのことしか書いていない。

ちなみに,この条文は,平成16年3月31日までは,「列車,自動車及び連絡船」であった。最後までJR四国直営だった四国のJRバスが,同年4月1日から子会社に移管され,全国のJRバスが子会社による運営になったことによる。

こうして,JRグループが経営するのは,名実ともに「鉄道」だけになってしまった。

国鉄時代の「国鉄監修・交通公社の時刻表」(今の「JTB時刻表」)の営業案内ページには,「レールの旅だけが,国鉄ではありません。国鉄バスで,もっと奥へ,連絡船で,もっと遠くへ…。」と書かれていた。日本の奥行きの深さを伝える名文だったと思うけれど,国鉄改革から22年。国鉄ははるか遠くになり,日本列島のかたちも,変わった。

今こそ対北外交交渉を

タイトルだけを見て,不思議に思われた方は多いだろう。特に,ふだんの私の主張をよくご存じの各位にすれば,転向したのかと疑われたかもしれない。

しかし,決して,転向したわけではない。それというのも,北朝鮮の核・ミサイル開発に対して,我が国が採るべき軍事的アプローチは,すでに論じ尽くしており,今更改めて言うことはないだけである。

もっとも,3年ぶりの北朝鮮によるミサイル発射を機に,復習しようという意欲あふれる方は,下記をお読みいただきたい。自画自賛で恐縮だが,安全保障の分野では,我が国で最先端のレベルの議論を展開できていると思う(言い換えれば,巷の議論のレベルがそれだけ低いということである)。

2006年7月4日付け「憲法9条をめぐる若干の問題」
http://d.hatena.ne.jp/stationmaster/20060704/1152010286

2006年10月10日付け「北朝鮮先制攻撃の可能性」
http://d.hatena.ne.jp/stationmaster/20061010/1160483767


ところで,最新の世論調査によれば,今回,ミサイル防衛システム(MD)を実戦配備し,迎撃態勢を整えたことについて,過半数の国民は賛成しているようだ。国防意識の芽生えの現れとすれば,頼もしい。

一方で,評論家の中には,「ミサイルを迎撃しようとする対応がどんどんエスカレートして,軍備拡張につながる」などと,主体を勘違いし,軍拡に狂奔しているのはほかでもない北朝鮮であることを忘れたかのような議論をする者もいたし,国会で「迎撃に失敗するかもしれないし,成功したとしてもミサイルの破片が降ってくる」と論じて,野党席からも失笑を買った,社民党の福島党首のような人たちも,いることはいる。ただ,今日の朝日新聞の「天声人語」は,北朝鮮のミサイルについて,「下手なサーカスに頭上で空中ブランコをされるようなもの」と,この新聞にしては真っ当なことを書いており,日本全体として,目が覚めてきたとはいえるだろう。

さて,ここからが今日の本題である。

憲法で,「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼し,戦力を放棄」してしまった日本は,戦後60年あまり,どのような相手に対しても「話合い」が通用するという幻想にとらわれてきた。いざというときには何の力にもならない己の「経済力」を過信し,外交といえば,ひたすら話し合うことだと勘違いしていたのである。その結果,動物並みに話合いの通じない相手である北朝鮮による日本人拉致を防げず,未だに解決できていない。

外交交渉を行う上で,背景にあるのは軍事力にほかならない。日本は,この国際場裏の常識に気付くのが,あまりにも遅かった。あるいは,多くの国民は,まだ,気付けていないのかもしれない。

今回,ミサイル発射を控えた北朝鮮は,日本のMDシステムに過剰反応し,「共和国の『人工衛星』を迎撃すれば,当該迎撃手段だけでなく,重要目標にも無慈悲な報復を加える」などと恫喝してきたが,この事実こそ,軍事力(MDシステム)に裏付けられた我が国の措置が,北朝鮮に対しても一定の通用力を有したことを如実に示している。

そうであれば,飢え死にする国民を放置してミサイルをぶっ放し,「瀬戸際外交」を続ける北朝鮮に対し,日本が採るべき道は,一つしかない。それは,ミサイル攻撃に対しても日本は必要十分な防衛力を有しており,北のミサイルの脅威など取るに足らない,という強い姿勢で外交交渉に臨むことである。そして,これこそが,北の「将軍様」にも理解でき,拉致問題の早期解決につながる唯一の道である。

リーダーたちの言葉2009

小欄では,毎年,JRグループ本州3社(東日本・東海・西日本)の入社式におけるトップの一言を紹介するのが恒例になりつつある。今年も,本州3社とJR貨物の社長挨拶(JR東海は葛西会長も含む)を紹介しよう。

たかが挨拶,されど挨拶。短い一言の中に,国鉄改革から22年を経たそれぞれの企業風土や,リーダーとしての人となりが色濃くにじみ出ている。去年も書いたことだが,JR東日本はダイナミック,JR東海の自信と誇りは,まばゆいばかりだ。

JR東日本・清野智(せいのさとし)社長

「当社の『グループ経営ビジョン2020』では、挑む、チャレンジするという言葉をサブタイトルに掲げている。今では第3の柱となっているSuica事業は、20年ほど前にわずか数人の社員の夢からスタートしたが、日本全国にまで広がった。このプロジェクトは、チャレンジ精神が推進力になっており、皆さんも大きな夢と志を持って、お客さまサービスに向けてチャレンジしてほしい。当社グループの今の姿は、これまで先人たちが種をまき、苗を育てた結果、花開いたものだ。未来に大きな花を咲かせるために、われわれとともに種をまき、苗を育てよう」

JR東海葛西敬之(かさいよしゆき)会長

東海道新幹線と12の在来線を不断の努力で維持、強化することが使命。国鉄時代に比べて飛躍的に発展し、他の追随を許さない高速鉄道会社になったが、いったん気を緩めるとその日から退化が始まる。今、大きな夢(東海道新幹線バイパス)に向かって踏み出しているが、それを担うのは皆さん。一刻も早く一人前の社員になり、進むことを期待する」

同社・松本正之(まつもとまさゆき)社長

「鉄道の仕事は安全と安定という土台の上に成り立っており、決められたことを守ることが大切。多くの仕事が組み合わさっているのでチームワークや総合力も重要。世の中の経済は混乱しているが、こういう時期こそ力をため、次への飛躍に向けて準備しなければならない。仕事を通じて世の中に貢献するという気持ちを大切に、難しかったり避けたいことにも真正面から取り組んでほしい。時間は皆に平等にあるが、いかに使うかによって成長の度合いも変わる」

JR西日本山崎正夫(やまざきまさお)社長

「鉄道の根幹は安全確保にあり、私たちはお客さまの尊い命をお預かりしていることを片時も忘れてはならない。安全は多数の社員の努力と膨大な設備からなる複雑なシステムの上に成立しており、1日も早くその道のプロになれるよう日々努力を積み上げてほしい。当社は安全性向上と並び変革の推進に取り組んでおり、自らが新しいJR西日本を変える、創るという気概を持ち、考え行動してほしい。会社を取り巻く経営環境は大変厳しく、また信頼回復に向けた道のりも険しいが、自らの力で乗り越えなければならない。大きな変革期こそ若い力が必要であり、安全で信頼されるJR西日本を創り上げ、持続的発展と社会貢献に向け、大きな役割を担ってほしい」

JR貨物・小林正明(こばやしまさあき)社長

「新入社員の皆さんには3つのことをお願いしたい。1つ目は安全第一ということ。安全は交通運輸業の最大のテーマであり、勝手な思い込みや行動はけがや事故を引き起こす。常に安全意識を強く持ち、自分の身は自分で守るという意識を持ってほしい。2つ目は何事も基本をきちんと身に付けること。3つ目は、知識、業務、技術力、ノウハウをどん欲なまでに習得すること。1日も早く職場にとけ込み、先輩たちから知識を学び、早く自分のものにしてほしい。世界同時不況の影響をまともに受けて、危機的な状況になっているが、一方で鉄道貨物は環境に優れた輸送機関として注目を集めつつあり、まさにこれからが鉄道の出番だ。JRマンとしての大きな誇りを持つと同時に、企業人としての責任感、自覚を持って、大いに活躍してほしい」

笑顔の別れ

先日,秋田修習時代の同期で東京にいる面々が,大阪に異動する私の壮行会を開いてくれた。

全国転勤は,宮仕えの宿命であり,これから,出会いと別れを繰り返していくことになる。修習の同期とは,「今生の別れ」というわけではないけれど,しばらく会えなくなる。

今の私があるのは,決して,私だけの力ではない。高校卒業の時,私が起草した「卒業生の言葉」の中で,「自らの線路を,自らの手で切り拓いてゆきます」と宣言した。その信念は,いささかも変わらないけれど,「線路」は,多くの人たちの支えの上にある。同期の励ましがなければ,私は,夢をかなえていなかったかもしれない。

秋田の同期は,私に,黄色いバラのプリザーブド・フラワーをプレゼントしてくれた。帰ってから,私は,黄色いバラの花言葉を調べてみた。

花言葉というのは,一対一対応ではなくて,いくつかあるが,その中に「笑顔の別れ」というのがあった。笑顔の別れ―。

黄色いバラは,この花言葉を知った上で選んでくれたのだろうか。そうだとすれば,実に心憎い。

ところで,「笑顔の別れ」といえば,もう一つあった。東京で,かなわぬ恋もしたけれど,その人とも,笑顔で別れ,私は,あさって,関西に帰る。

「高速道路1000円」は国益に反する

「百年に一度」という大げさな修飾語を付ければ,景気対策として何をしてもいいと思っているのか,あるいは総選挙の票目当てか知らぬが,先般,高速道路の郊外料金を土曜・休日に限り一律1000円とする法律が成立した。

定額給付金」に引き続き,むちゃくちゃな政策で,この国の為政者にはまともな頭が備わっていないことを,高らかに宣言したようなものだ。

まず,「高速道路1000円」というインパクトにより,マイカー利用者の外出を促そうという狙いそのものが,温室効果ガスの排出削減を進める環境政策と真っ向から矛盾している。「チーム・マイナス6%」と銘打って,「クールビズ」など,官民挙げて地球温暖化対策を進めている時世に,自動車の利用を促進するなど,右手で与えたものを左手で奪うようなものではないか。

国土交通省の調査によると,平成18年度,わが国の二酸化炭素排出量のうち約2割が運輸部門に由来するが,自家用自動車(マイカー)は,その48.2%を占め,輸送手段別でぶっちぎりのワースト1である。そして,マイカーの占める排出割合は,平成2年度には39.0%であったから,低公害車の普及などにもかかわらず,状況は悪化の一途をたどっている(ちなみに,運輸部門からの排出量全体では,平成2年度から平成18年度までに約17%増加している)。

(参考 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kankyou/ondanka1.htm

日本は,平成9年に採択された「京都議定書」に基づき,二酸化炭素排出量を1990(平成2)年比6%削減する義務を負っているが,こうした状況下でマイカー利用を促すなど,国際約束を破棄するに等しい。

ちなみに,輸送量単位(旅客・人トン,貨物・トンキロ)当たりの二酸化炭素排出量(単位はいずれもグラム)は,旅客輸送では,鉄道18,バス51,航空111,マイカー172であり,貨物輸送では,鉄道20,船舶39,営業用トラック150,自家用トラック1021となっている。このデータから明らかなことは,公共交通機関の中での鉄道の優位性と,自動車の環境負荷の大きさである。

「高速道路1000円」による悪影響は,環境問題だけにとどまらない。とりわけ深刻な打撃を被るのは,長距離トラック等の逸走が予想される内航海運(船舶)事業者である。船舶業界は,昨年秋ころまでの燃料高騰の影響もあり,深刻な経営状態が続いている。国は,船舶業界の損失を補填する考えだが,尻拭いのために税金を投入しなければならない政策など,初めからしなければよいのである。

また,船舶業界に赤字補填するのなら,同じく影響を受けるであろうJR貨物にも補填するのでなければ,物流の自由な競争市場とはいえまい。声の大きな業界だけに補填するのは,不公平である。

さらに,「高速道路1000円」による不要不急のマイカーの増加は,高速道路の渋滞をもたらし,定期トラック便や,路線バスの定時運行が損なわれる懸念もある。こうした「見えざる損失」について,国は,どう考えているのであろうか。

ところで,根本的な疑問として,高速道路料金は,通行の対価ではなく,建設費の償還という位置付けだったはずである。値下げにより得られなくなった収入分は,どうするつもりなのか。ここでも,税金で穴埋めするのであろうか。

そうすると,6年前の道路公団民営化とは,一体何だったのか。本来,高速道路会社が自主的に決定すべき通行料金を,いかなる権限に基づいて,国が「1000円にせよ」と命令するのか,もはや意味不明である。

考えれば考えるほど,「高速道路1000円」は,なんらの長期的展望もなく,大衆の歓心を買うためだけに,思い付きでなされた政策といわざるをえない。このような衆愚政治的・風見鶏的政策を続けていては,日本国は,劣化の一途をたどるばかりである。

天下の愚策・定額給付金

国会で,もめにもめた「定額給付金」の支給が,一部の自治体から始まった。

経済のことは私にはよく分からないが,よくも2兆円も使って,天下の愚策に打って出たものだ。

思えば,ちょうど10年前の平成11年の今ごろ,当時,連立与党に入りたての公明党の発案で,「地域振興券」なるものが,16歳未満の子供のいる家庭に配付された。あの地域振興券がもたらした経済効果は,きちんと検証された上での今回の定額給付金なのだろうか。私が日本中を旅した実感としては,10年前のほうが,地域(田舎)ははるかに「振興」していたが。

そもそも,全国民に一律1万2000円(子供・老人は2万円)を配って,経済政策上意味があると本気で考える者がいるのだろうか。「持てるもの」にとってみれば,吹けば飛ぶような額であろうし,「持たざるもの」は,生活費の足しにするだけである。

また,こういう見方もできよう。まじめに働いた者が納めた税金が,引きこもりのニートに再配分されるわけである。「働かざる者,食うべからず」という言葉があったはずだが,定額給付金は,まさに国を挙げての「モラル・ハザード」(倫理破壊)である。もっとも,この国は,農民をして稲作を放棄させ,仕事をしない農家に金をばら撒く「減反」を何十年も続けてきたから,モラル・ハザードは,今に始まったことではないのかもしれない。

それにしても,どうしてこうも目先のことしか考えない人が増えたのか,不思議でならない。同じ2兆円を使うなら,もっと有意義な使い道は,いくらでもある。いわゆる「セーフティネット」としての社会保障,次代の国家を支える人材の育成,待ったなしの環境問題…。

短期的な景気刺激策として,どうしてもというのなら,例えば,成田・羽田の両空港の拡張整備を加速し,物流分野での国際競争力を高めるとか,JR東海が自己負担での建設を決めた東海道新幹線のバイパス(リニア中央新幹線)整備に従来の「整備新幹線」と同じ枠組みを適用し,開業時期を早め,「この国のかたち」を変えるとか,方法はいくらでもあった。

ちなみに,私は,定額給付金を受け取ったら,次代の鉄道の発展のため,全額をJRグループにつぎ込むつもりである。

I'd rather be flying.

JALから,こんなリリースが出た。

「空がもっと近くなる。"JALケータイ"登場」

http://www.jal.co.jp/k-tai/pr/change/full/


この携帯,「欲しい!」と思ってしまうのは,私だけではないだろう。

JALauのコラボレーションに対抗して,ソフトバンクから,「線路がもっと近くなる。"JRケータイ"」など発売されたり,はしないか……。
ソフトバンクモバイルの前身のJ-フォンは,もとJRグループの電気通信子会社であり,基幹ケーブルはJR線路沿いに敷設されている。)