朝日新聞のススメ

ジンバブエ査証


日記のタイトルだけを見ると、「転向」したのかと勘違いされそうだが、そうではない。

私の実家では、家族全員、思想的に相容れないものを感じつつも、「朝日新聞」を購読している。朝ご飯を食べながら、「社説」や、読者投稿欄「声」などを読むと、朝から気分が悪くこともしばしばなのだが、たまに、よい記事もあったりする。

先週・17日から、国際面で、「国を壊すジンバブエの場合」と題した特集記事が組まれている。

ジンバブエといえば、私が6月中旬に旅した国だ。当時、首都のハラレ市内のスーパーには、食糧品はあるにはあった。だが、年間2000%を超えるハイパー・インフレで、国民生活は疲弊していた。ガソリンスタンドの多くは「開店休業」で、営業中のスタンドには、車が列をなしていた。為替の公定レートは「1USドル=250ジンバブエ・ドル(ZWD)」だが、銀行は「1USドル=15,000ZWD」の闇レートで外貨を買いあさっていた。これは、私の旅行記で書いたとおりである。

その後、事態がますます深刻になっているとは、思いもよらなかった。

私が日本に帰国した直後の6月26日、ムガベ大統領は、「価格半減令」を打ち出し、従わない商店主を逮捕し始めたという。直前の1週間で、物価が3倍になったことから打ち出した、その場しのぎの弥縫策だった。モノの売り値を半分にさえすれば、庶民でもパンが買える―。

そんなこと、ありえないのである。これが引き金となり、「半減令」直後の7月には、インフレ率が年率7034%を記録。主食のパンも、卵も、肉も、表の流通ルートからは消え、異常なまでに高騰した闇市場でしか、手に入らなくなったという。

さらに、ムガベ大統領は、9月6日、公定レートの切り下げに踏み切った。「1USドル=30,000ZWD」

ジンバブエ・ドルの価値が、一挙に120分の1。これに引きずられ、10月中旬時点で、実勢レートは、1USドル=75,000ZWDまで急落しているという。

ヨーロッパ人宣教師たちによる探検が進むまで、アフリカは、西欧諸国から「暗黒大陸」と呼ばれた。日本から見るアフリカは、今なお「暗黒大陸」な気がしてならない。もっと、国際関係に興味を持ってほしいし、世界の実状を知ってもらいたいと思う。

その点、朝日新聞の今回の特集は、高く評価できる。気になった方は、ぜひ図書館などで、10月17日以降の朝日新聞の「国際」面を、開いてみてほしい。

私は、机の引き出しから、パスポートを取り出すと、ジンバブエのビザが貼りつけられたページを、しばらく眺めていた(写真)。ジンバブエには、ちょうど1週間滞在し、鉄道にも乗った。だが、真っ先に思い出されるのは、ジンバブエで出会った人たちの顔ばかりであった。