政治の横暴を許すな

といっても,ガソリンの暫定税率をめぐるつまらぬ攻防に,興味関心はまったくない。

小欄では常々,「整備新幹線」の建設に疑問を呈してきたが,最近,地方選出の与党議員の間から,荒唐無稽な暴論が声高に主張されている。

それというのは,「開業後にJRグループが国に支払うべき賃料を,前倒しして負担させ,建設費に充てる」というものだ。

整備新幹線建設の財源は,国・地方自治体からの補助金(約50%)と,開業後に運営を行なうJR各社が支払う施設使用料とで賄われている。与党の主張は,このスキームに着目したものだが,JRの負担は,「受益の範囲内」という上限が設けられていることに注意しなければならない。政治の介入で,無為無策に新線建設を進め,財政破綻した国鉄の轍を踏まないためである(しばしば,「我田引鉄」のローカル線,といわれるが,東北・上越新幹線の建設費も大きい)。

国鉄改革は,国鉄本社の改革派若手幹部が,国会の国鉄問題小委員会(三塚委員会)と連携し,「クーデター」的に成し遂げられた。国鉄の累積債務は20兆円を超えており,ビジネスへの政治介入が何をもたらすか,政治家は身をもって知ったはずだった。

ところが,「喉もと過ぎれば」で,かつての国鉄のように,JRグループなど意のままに操れる,と政治家が考えているとすれば,それは大間違いである。「JR東海はリニアを建設できるほど儲かっているのだから,整備新幹線建設費を負担すべき」など,どの口で言えるのか。

JRグループ本州3社(東日本・東海・西日本)は,国鉄分割民営化にあたり,既存の新幹線施設を有償で買い取り,国鉄の長期債務を負担した。例えば,JR東海が抱えている長期債務は,平成19年3月現在で約3兆4000億円もあり,この負担がなければ,新幹線の運賃・料金は,現行より1割は安くできると見込まれている。すなわち,JRグループは,利用者の負担で,国鉄の債務を返済し続けているのである。

そうであれば,まずは,国鉄債務を完済し,利益を利用者・株主に還元すべきであって,JRグループが,得体の知れぬ整備新幹線建設費を負担すべき義務は,法律上も事実上もない。

聞くところによると,自民党武部勤元幹事長は,JRの負担に難色を示した議員に対し,「お前のところは新幹線が通っているじゃないか。北海道にはないんだぞ」などと発言したという。こういう単細胞的発想の政治家にわからせるよい方法はないものか。